【アイスホッケー】全日本選手権・優勝インタビュー 藤澤悌史監督(栃木日光アイスバックス)
バックスが誕生して今季で25周年。 一番変わったものは「自信」。
――今年はバックスが誕生して25周年です。藤澤監督は古河電工の最後のシーズン(1998-1999シーズン)に移籍してこられて、バックスの一期生でもありました。 藤澤 釧路で生まれて、東京のチーム(西武鉄道)に入って…。いま考えてみれば、不思議な「縁」ですよ。私は日光という街が好きだし、ここまでつないでくれたスポンサーの皆さん、ファンの皆さん、クラブ関係者には感謝しかありません。 ――1998年のFW伊勢征広さんと藤澤さんの会話を覚えているんです。夏の練習が始まって、「週末はどこに行っていたの?」と伊勢さんが聞いたのですが、「湘南にサーフィンに行ってました」とガングロの藤澤さんが答えていたんです。私は内心「まだヨッチは東京を捨て切れていないんだ。1、2年でやめていく選手なのかもしれないな」と思ったんですよ。移籍が飛躍のきっかけになった藤澤さんにとっては本当に失礼な話なのですが、将来、チームの監督になるなんて、当時は思いもしなかったんです。 藤澤 けっして優等生タイプではなかったし、チャラチャラしていましたからね。ただ、人との出会いは大事にしていたんですよ。いまだに長いお付き合いをさせていただいている人もいますし、クラブの人、たとえば土田英二さん(GM、西武鉄道FWからバックスへ移籍)がそうですしね。 ――全日本2連覇の集合写真で、藤澤さんの右が土田さんで、左が衣笠伸正さん(バックス職員、元FW)でした。3人ともバックスOBで、苦労が多かった時代の選手です。 藤澤 いやいや、苦労はしていないですから(笑)。でも、ずっと同じ畑でやってきたホッケーマンですから、思いも共通しているものがあると思います。 ――今のバックスを見て「変わったな」と思う点はどこでしょうか。 藤澤 この25年で「勝つ」可能性が増えましたよね。負けることもあっただろうし、失敗することもあっただろうけど、そのたびにクリアして成長してきた25年だったと思うんです。そして、みんなが「自信」を持って毎日を送っている。私生活や氷上練習、ドライトレーニング(陸トレ)を含めて、これをやりたいんだったらこうすべきだというのを考えられるようになったと思います。 ――誤解を恐れずに言うと、古河の晩年は、会社だったり、チームメイトやスタッフの陰口をたたく残念なチームでした。職場の愚痴を言う人がいると、仕事そのものに悪影響が出るんです。思うところがあるならば、仲間や上司と相談すればいい。企業が廃部を決めた背景には、そうなるだけの理由があったと思うんです。 藤澤 どうしてもチームの状態が悪くなると「誰々のせいだ」となりがちですよね。それはチームとして戦っていく中で、じゃまなものになるんです。実際、バックスになった時にも、前からあった「流れ」があったんですよ。チームの雰囲気と言えばいいのかな。それは2017年にコーチとして入った時にも、少しあったんです。 ――それが今、古河電工がアイスバックスのサポートをしてくれるようになりました。20年以上の月日が経って、歴史に埋もれていたものに「そのあと」が加わるようになりました。 藤澤 本当にそうです。一回はやめたはずなのに、もう一度スポンサーになってくれた。こういう例は、スポーツ界では聞いたことがありません。日光の市民の皆さんも喜んでいると思うんですよ。古河さんがアイスホッケーに戻ってきてくれた。やっぱり日光と古河電工、そしてアイスホッケーは密接な関係があるんです。私も本当にありがたいと思っているし、心強く感じています。 ――全日本選手権を連覇した今、何を考えているのでしょう。 藤澤 アジアリーグで初優勝することです。それが一番の目標だし、優勝することだけを考えてやっています。チームはいい状態ですし、選手も自信を持っている。今も(インタビューの最中も)選手は体育館で、ドライトレーニングをやっているんですよ。もう、次に向かって動き初めている。私も気持ちを切り替えてやっていこうと思っているんです。 藤澤悌史 ふじさわ・よしふみ H.C.栃木日光アイスバックス監督。1976年2月12日生まれ。北海道釧路市出身。釧路愛国小2年生でアイスホッケーを始め、釧路景雲中、釧路緑ケ岡高(現・武修館高)から西武鉄道に入社。FWとして活躍し、その後はカルガリー・カナックス、アラスカ・ゴールドキングスを経由して再び西武鉄道でプレーする。1998-1999シーズンに古河電工に移籍、その流れで翌シーズンから日光アイスバックスに在籍する。引退後は男子U16強化コーチ、女子日本代表のコーチ・監督を務め、2017年からアイスバックスのコーチ、2021-2022シーズンからは監督に。全日本選手権では2023年と2024年に優勝監督になっている。
山口真一