【アイスホッケー】全日本選手権・優勝インタビュー 藤澤悌史監督(栃木日光アイスバックス)
真来と健斗。あのシュートセンスは 練習では教えられないものなんです。
――決勝はレッドイーグルス北海道が相手。どういうゲームプランで臨んだのでしょう。 藤澤 絶対にロースコアのゲームにはなるだろうと、最初は思っていました。16分、PPでFW寺尾勇利のシュートで先制した。ウチとしては理想の形でした。 ――3ピリの48分にレッドイーグルスに勝ち越しゴールを許しましたが、その次のシフトで同点に追いつき、さらに次のシフト、49分に3-2と勝ち越しました。 藤澤 あれはひじょうに大きかったです。点を取られてしまった時に、その次のシフトで点を取り返すことができた。しかも、その11秒後には、3点目を取ることができました。あの場面は、この試合のターニングポイントでしたよ。 ――54分と55分、今度はレッドイーグルスに得点を許しました。スコアは3-4。バックスは57分にタイムアウトをとりました。 藤澤 まずは6人(攻撃)の話。それから選手に確認をしたんです。エントリーして、しっかりネットまで通して、人数も数的優位をつくっていこう、と。実際は、なかなかエントリーできなかったんですけどね。 ――6人攻撃をかけた3ピリ残り40秒。FW古橋真来選手が、Dゾーンからニュートラルを駆け抜けてОゾーンにエントリーします。古橋選手に対して、レッドイーグルスの5人はいずれも5メートルの距離で近接して守っていました。5人の相手にカバーされた古橋選手は、エントリー後はいったん右レーンのFW鈴木健斗選手に預けて、それから相手ゴール前に走り込んでシュートディフレクション。バックスはゴール前にFW大椋舞人選手もいたので、2対1の状況でした。「エントリーして、しっかりネットに通して、数的優位をつくっていく」。まさに、タイムアウトで藤澤監督の言っていた通りになりました。 藤澤 真来に対して、レッドイーグルスがかなりタイトにトラップをかけていたんです。エントリーして、そこで健斗に預けて、真来がゴールに向かっていったのが大きかったと思います。真来がGKのスクリーンに入るか入らないかの微妙な場面を見計らって、健斗がシュートを打った。それがなければ、あの得点は生まれなかったと思います。 ――古橋真来と鈴木健斗。練習で培ったものだけではない、生まれ持った「何か」を感じさせるゴールだったと思います。 藤澤 いやいや、あんまりほめちゃダメですよ(笑)。でも、特に真来は独特な嗅覚を持っている。読みもすごくいいんです。おいしいところを持っていく選手は、練習では教えることができないものを持っているんですよ。 ――オーバータイムは開始20秒で決着がつきました。古橋選手がエントリーして、そのままゴール裏を運んで流したパックを、相手との競り合いに勝った鈴木選手が、左からたたき込みました。 藤澤 去年の準決勝でもレッドイーグルスにオーバータイムで勝っているんですが、相手のセットがその時と同じなんです。FWが入倉大雅、髙木健太、DFが佐々木一正だったかな。ウチのセットはその時とは違うんですが、真来、健斗、DFに佐藤大翔。特に代える必要はないと思って行かせました。 ――レッドイーグルスとしては、2つ目にFW中島彰吾、高橋聖二、DF橋本僚をシフトする予定だったと思います。逆に言うと、取れるときに勝ちを取ったという意味では、「バックスらしい勝ち方」といえるのではないでしょうか。 藤澤 早い時間で決めたかったというのはありましたね。あの試合で真来にマッチアップしようとするならばラインを考えるべきだったという気もしますが、チームによって、いろんな考え方がありますから。バックスは優勝できる力があるチームだということは私ももちろん思っていましたし、バックスは何年も「あと一歩」という立場にとどまっていた。フィンランドのスタイルを取り入れたことで選手のスキルもアップしていましたし、あとは結果だけだったんですよ。それが連覇という形になった。そして何より「日光で勝てた」ことがうれしかったです。試合前に日光のファンの皆さんが、身震いするような声援を送ってくれていたんですよ。それに応えることができて、ほっとしたというのがありました。