25年ぶりVに邁進する広島と巨人の差を生んだフロント力
25年ぶりの優勝へ向けて広島が順調にマジックを減らしている。24日の巨人戦でマジックを点灯させると、そこから中日戦を挟み4連勝。逆転勝利あり、延長戦での大爆発ありと、他チームを寄せつけない勢いでマジックは「13」となった。最短、9月6日の中日戦で優勝が決定する。 開幕前には、エースの前田健太(28)がドジャースに移籍、おまけに代役エースに指名された大瀬良大地(25)が故障離脱するなどして、ほとんどの評論家の優勝予想からは外されていた広島と、新外国人のギャレット・ジョーンズ(35)などを補強して優勝候補として名前の挙がっていた巨人。しかし、9月戦線に持ち込めず巨人は広島にマジック点灯を許した。この差は、どこから生まれてしまったのか。 元巨人OBで、広島ではコーチ経験もある“球界大御所”の広岡達朗氏は、「広島の独走理由には、他のチームがたいしたことがなかった、という相対的な理由も大きい」とした上で、「とくに巨人とは、チームビジョン、フロントの編成能力の差が出た」と指摘した。 「広島は、生え抜きの若手の育成をメインに、そこに外国人を補強するというチームの根本的な考え方がある。一方、巨人は、外からFA、外国人を補強すればいいという考え。3軍制を導入して変革しようとしているが、ここまで育成に力を入れてきたチームと目先の勝ちにこだわってきたチームとの編成の差が出ている。経営の形態も規模も、両者は大きく違うが、広島は松田オーナーが自ら編成会議にまで出席して陣頭指揮をとる。つまり金庫を握っている人間が、GM的な仕事までやるので、生え抜きを育成していくんだという方針がぶれない。広島形式は巨人だけでなく阪神やオリックスなど他球団も見習わねばならないだろう」 また広岡氏はベテランの気持ちの持ち方も違うという。 「広島の黒田と新井、巨人の阿部、村田を比べればよくわかるだろう。新井のひたむきな姿勢で、若手がひっぱられている。それに比べて巨人の阿部や、村田はどうだ。怪我もあるのかもしれないが、プレーに必死さがない。阿部にしても、ようやく調子を上げてきたが、簡単にエラーをするし、村田も、ここ一番での凡退やミスに悔しさがにじまない。ベテランの姿が、チームのまとまり、雰囲気、にかわり、いざという集中力につながるものなのだ。両チームの差は、ここにも出ていた」 新井貴浩(39)は、5月に2000本安打を記録したが、燃え尽きることなどなく、逆に加速、27日の中日戦では延長10回に駄目押しの満塁本塁打を放って、これが通算10本目のグランドスラム。広島では8本目となり、衣笠祥雄の球団記録を更新した。91打点はリーグトップ。打率、得点圏打率も上位をキープしている。2年前には阪神をクビになった男が、見事な復活を原点・広島で果たしている。