25年ぶりVに邁進する広島と巨人の差を生んだフロント力
日米通算200勝を成し遂げた黒田博樹(41)も、8勝7敗、防御率3.03でローテーションを守っている。 緒方監督も「ベテランが全力プレーをするので若手が気を抜けない」と語っていた。 今季ブレイクして堂々のエースとなっている野村祐輔(27)は、13勝3敗、防御率2.87の成績。黒田のインサイドをツーシームで攻めるピッチングスタイルに刺激を受け、今季はツーシームを積極的に取り入れて、明らかにピッチングスタイルが変わっている。昨年までは不安定だったストッパーの中崎翔太(24)も、自信と共に黒田流のインサイドの使い方を学んで、防御率1.52と安定している。ベンチもジャクソン、ヘーゲンズ任せだった中継ぎに球威のある薮田和樹(24)を配置転換するなど采配に冴えがある。 一方、巨人は昨年オフにキャッチャー復帰を指令されていたはずの阿部慎之助(37)は開幕に出遅れ、結局、マスクはかぶれず、67試合にしか出場できていない。現在数字を右肩上がりにしているが、時すでに遅しだ。キャプテンの坂本勇人(27)が孤軍奮闘しているが、投打にチームリーダーのいる広島に比べると、確かにリーダー不在である。 「広島は若手が出てきているが、スカウティングの力と共にコーチの指導が見逃せない。コーチも筋が通っている。今季から、打撃コーチが増えたが、徹底して妥協せずに練習をさせる、という伝統が守られている。ボールを振らず、8月の終わりになっても、菊池、丸、鈴木らのスイングは鋭い。このバットスイングの違いは、バットをいかに振り込んできたか、という証拠だ。またセンターラインの守備が堅いのも広島の特徴。機動力、そして守り勝った試合も少なくない。ここにもチーム作りの指針が出ている」 確かにベテランに刺激されるように昨季は、不振だった“菊丸コンビ”が完全復活。さらに“神っている”鈴木誠也(22)、田中広輔(27)ら若手が台頭してチームを底上げしている。 「そういう意味で広島が優勝することの意味は大きい」 辛口の広岡氏が絶賛するカープ流のチーム作りが、25年ぶりの優勝という形で結実するとき、それは球団経営、球団編成へのひとつのアンチテーゼになるのかもしれない。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)