ヒョンデが「Nブランド」で東京オートサロンに初出展した理由、IONIQ5 Nで挑む「ハイパフォーマンスBEV」というカテゴリー
東京オートサロン2024に、初出展したヒョンデ。BEVのIONIQ5と水素燃料電池車のNEXO(ネッソ)で、ゼロエミッションのブランドとして日本に再参入を果たしたのが2022年。2024年は、ハイパフォーマンス・ブランドである「Nブランド」を日本に投入する。「Nブランドのキーマンふたり」に東京オートサロン会場でインタビューした。 PHOTO:Hyundai Mobility Japan/Motor-Fan.jpヒョンデのハイパフォーマンス・ブランドが「N」である。「ドライビングの楽しさを追求する」のがNブランドの存在意義で、BEV時代になってもそのコンセプトは変わらないという。 今回の東京オートサロン2024に持ち込んだのは、IONIQ5 Nと、世界初公開のNXP1の2台。NPX1は、IONIQ5 Nをベースとしたパフォーマンスコンセプトマシンで、Nブランド初の電気自動車専用のNパフォーマンスパーツのプロトタイプを採用している。 そのNブランドのキーマンが、Nブランドマネジメント室のパク・ジュンウ(Joon Park)室長とNブランド&モータースポーツ担当のティル・ヴァルテンベルグ(Till Wartenberg)Nブランド&モータースポーツ事業部執行部長だ。 筆者はWRCラリージャパン後に開催されたIONIQ5 Nのサーキット試乗会でジュンウさんに会っている。そのときに、話をしていたので、彼がどれほどクルマ好き(エンスージアストというより、純粋にクルマ好きといった方がしっくりくる)でスポーツドライビングを愛しているか、理解していた。トヨタMR2をはじめとした日本のスポーツカーの愛好家の一面もある。 MF:ジュンウさん、東京オートサロンに来たのは何度目ですか? パク・ジュンウ氏(JP):たくさんきていますよ。5回くらいはきていますね。大学生のときにもここへきました。韓国と日本は飛行機で2時間ほどで遠くないですしね。私のような人にとってオートサロンは、いわばホットスポットなんです。ここへきて、自動車市場がどうなっているか見るんです。 MF:とはいえ、一観客ではなく自分のブランドで初参加になります。感想はいかがですか? JP:クルマのブランドとしてTASに来られたのは、若い時からの夢でもありました。西浦(Nブランドの試乗会が行なわれたスパ西浦サーキット)で会ったときに、「オートサロンにはスペシャルなクルマを持って行きますよ」と話しました。その約束を果たしましたよ(笑)。ブースサイズは小さかったですが、プレスカンファレンスには大勢の人が集まってくれました。最初のエレクトリックハイパフォーマンスカー、IONIQ5 Nは注目を集められたと思います。 MF:実際のファンの反応はいかがでしたか? JP:他の記者にも同じことを何度も尋ねられました。なぜ東京オートサロンなのか?と。私はこう答えました。東京オートサロンに出ることは私の、私達のバケットリスト(bucket list=死ぬまでにやりたいことの意味)のひとつなのです。自動車業界にいる私の多くの日本の友人たちも、そして私自身も、我々ヒョンデが日本市場に参入したいなら、スペシャルな存在であらねばならない、日本市場で成功しようと考えたらスペシャルである必要があるのです。ほかの自動車市場では、ノーマルのIONIQ5 Nをローンチしています。私たちはBEVパフォーマンスカーの可能性をお見せしたくてMPX1を、Right Space(正しい場所)である東京オートサロンに持ってきました。ここに集まる日本のリアル・カーエンスージアスト、私のようなクルマ好きにお見せしたかったのです。ブースがもっと広ければもっとたくさん凄いクルマを持ってきますよ(笑)。 JP:今回持ってきたNPX1で、これまで日本であまりプレゼンスのなかったNパフォーマンスパーツを紹介できました。ただの初公開、アジアプレミアでもなくワールドプレミアを東京オートサロンでしたことで、ヒョンデの日本に対する意気込み、本気度を見ていただきたいと思います。もうひとつはBEVのハイパフォーマンスカーの新しい可能性の提言として、今回のブースを準備してきました。 ティル・ヴァルテンベルグ氏(TW):我々は、将来に向けていろんなビッグピクチャー(青写真)を描いています。そのひとつがモータースポーツでお客様が期待にどう応えるかです。とはいえ、モータースポーツでも持続可能性が重要になってきている現代、Nはどう存在するのかも課題です。ただひとつ確かなのは、「NはNとして残る」、Nのキャラクターは失わないことは大前提として合意されています。BEVへのパラダイムシフトは行ったり来たりしてはいるけれど、NはNとしてのアイデンティティを維持していくということです。 TW:我々は、エレクトリックハイパフォーマンスカーのエコシステムの構築をサポートする必要があると考えています。 JP:韓国では、サーキットに充電インフラも整備しています。家からサーキットまで100km走っていくと、到着したときにはバッテリーは減っていますね。サーキット走行をしたあとには、充電が必要です。それも短いブレーク中にできればいいですよね。サーキット走行でバッテリーが空になっても、そこで充電ができれば家に帰れます。我々は市場規模に合うインフラを構築したい。でも我々がサーキットに充電設備をつくるのは、それとは別の話です。 JP:BEV、そしてソフトウェアが多くのことを決めていきます。エンジン車でチューニングしようと思ったら物理的にギヤを組み替えてギヤレシオを変える必要があります。ゲームのグランツーリスモではクリックするだけで、ギヤレシオを変えられます。8速ギヤと6速に、5速を9速ギヤボックスにも変えられます。ハイパフォーマンスBEVもそうです。お客様はソフトウェアをOTA(Over The Air)でダウンロードできます。そしてクルマを変えることができるんです。サウンドも同じです。 MF:私はサーキットでIONIQ5 Nに試乗させてもらっています。すごくドライビングが楽しいクルマでした。サウンドも最高によかった。でも、乗ってもらわないとわからないですよね? 日本のお客さんも試乗したらIONIQ5 Nの魅力がすごくわかると思いますよ。どうやって乗せようと思っていますか? JP:あなたが言うことはまったく正しい。乗らないとわからないんです。我々も、ヒョンデモビリティジャパンも良い計画を持っています。WRCラリージャパンのあと、西浦サーキットでテストドライブをしましたね。まずはメディア向けの試乗機会を作ります。それから日本のお客様にNを知ってもらう機会をたくさん作ろうと思っています。日本だけでなく、中国、韓国、アメリカ、オーストラリア……。 MF:明日(1/13日と14日にデモランが行なわれた)のデモラン、てっきりジュンウさんご自身がドライブするんだと思っていましたよ(笑) JP:そうしたいです(笑)。じつは私はハードワーカーなので(笑)、仕事から帰るのが夜中の11時、12時になってしまうんですよ。でも、そのあと大きな駐車場へ行ってドリフトの練習をしています。私のIONIQ5 Nは、まだ納車後2000kmしか走っていないのに、もうタイヤが丸坊主です(笑い)。日本の、韓国のアメリカのドイツの、カーエンスージアストのほとんどは……もちろん私も含めてですが、サウンドやスモークが大好きだと思います。IONIQ5 Nのエンジン車よりも大きなサウンド、ドリフトスペックを、きっと受け入れてもらえると思っています。 MF;ありがとうございました。Nブランドの日本での展開が楽しみです。
鈴木慎一
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