YouTuberの論理がZ世代に与える絶大な悪影響 苦言を呈する「アンチ」に「アンチ」する世界観
この「向いてる方と向いてない方」を分断するのが現代のビジネスの基本論理であり、この応用がアンチ─アンチなのだ。インフルエンサーは客の方だけ向いておけばよくて、アンチは無視するか攻撃し返すのが正しい。繰り返すがこれはマーケティングの有力な手法というだけであって、人生の指針として正しいかはまったく別だ。 そう言える理由はいくつかある。シンプルな理由としては、アンチ―アンチしても、われわれの(長期的な)得にはならないからだ。インフルエンサーは、アンチ認定をすることでファンを繋ぎ止め、結束を高め、収益を得る。収益のためにそうしているのだ。しかし、お金も出ない日常で他者をアンチ認定しても、われわれには一銭も入ってこない。それどころか、自らへの信頼を失って、人間関係が悪くなるだけだ。何の疑問もなく推しに従い、リアルでも「アンチ―アンチ」するZ世代は、そういったリスクをどうやら勘案できてはいないのだ。
舟津 昌平 :経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師