たった1年で販売終了? 米国の希少車 42選 後編 「大人の事情」で打ち切られたクルマたち
リンカーン・ブラックウッド(2002年)
SUVのナビゲーターの大ヒットに味をしめたリンカーンは、ピックアップトラックの高級化にも手を出した。クルーキャブのフォードF-150をベースに、ナビゲーターからフロントエンドを移植し、より高級感を出すためにウッド調のインサートを荷台側面に追加した。 リンカーンは設計過程でいくつかの重要なディテールを見落としていた。ブラックウッドには後輪駆動しか設定されず、カーペットが敷かれた荷台の上には、簡単に取り外せないプラスチック製トノカバーが被せられている。言い換えれば、雪道でのトラクション確保に苦労し、食料品やゴルフクラブ程度の荷物しか運べないトラックを作ってしまったのだ。 ブラックウッドは米国市場で2002年のモデルイヤーのみ販売された。今日、走行距離の多い中古車が7000ドルから出回っており、状態のいいものは1万3000ドルで手に入る。
メルセデス・ベンツR 63 AMG(2007年)
2007年のメルセデス・ベンツのラインナップには、Rクラスのようなファミリーカーと、E 63のようなAMGエンジン搭載の高性能モデルがあった。この2つの異なる世界が思いがけず衝突し、2006年のデトロイトモーターショーでR 63 AMGが発表された。6人が比較的快適に座れるワゴンでありながら、最高出力507ps、0-97km/h加速4.7秒の性能を誇る。 R 63 AMGは、2007年モデルイヤーに特別注文限定モデルとして販売された。生産台数は未公表だが、米国市場向けの約30台を含め、全世界で200台以下という意見もある。AUTOCAR記者の1人は、ユタ州ソルトレイクシティのメルセデス・ディーラーで働いていたときに運転したことがある。R 63は信号待ちから次の信号まで砲弾に乗っているような感覚だったらしい。 現在ではほとんど見かけなくなったが、中古のR 63は4万ドルから手に入る。
キア・ボレゴ(2009年)
キアは2008年のデトロイトモーターショーで、最大かつ最重量のSUVであるボレゴを発表し、2009年モデルとして発売した。タイミングは最悪だった。当時、世界的な金融危機で米国経済は逼迫し、消費者は大型で燃費の悪いクルマから低燃費モデルへの買い換えを進めていたのだ。 キアは年間2万台の販売を目指していたが、米国では1万台を販売するのがやっとだった。結局、2010年モデルイヤーで廃止となる。キアはボレゴの復活を示唆していたが、実現はしなかった。現在、同社最大のSUVは3列シートのテルライドである。 手頃なコンディションの中古車は、現在1万ドルから購入できる。