「バルサに完璧にフィット」戦術家でもカリスマでもない“名将”ハンジ・フリックの魅力「誰のことも忘れない」【現地発】
親友のマテウスも感銘を受ける姿勢
監督歴も長い。しばしば「サメの水槽」と例えられるバイエルンのゼーベナー・シュトラーセ(クラブハウス)でうまく立ち回った実績に加え、ドイツ代表監督時代の苦い経験——カタールW杯早期敗退や志半ばでの解任――も、バルセロナを率いるうえで役に立てているだろう。 ドイツ以外の国で働くのは久しぶりだ。ジョバンニ・トラパットーニ率いるレッドブル・ザルツブルクでアシスタントコーチを務めていた06年以来である。だが、バルセロナからの誘いを躊躇することはなかった。国外のビッグクラブで大きなチャレンジをする日を長年夢見ていたからだ。それが大きなモチベーションになっている。 ドイツ代表監督として成功を収められなかったものの、指導者としての評判は折り紙付き。人を惹きつけるオーラがあり、プロとしての専門知識と人間性で選手たちの信頼を得ようと考えている。彷彿とさせる名将は、彼自身が選手時代に師事したユップ・ハインケスである。 ハインケス率いるバイエルンでプレーしていた頃のフリックは守備的MFとして、なによりスター然としたところがないチームプレーヤーとして全幅の信頼を置かれていた。そんなかつての教え子を、ハインケスはこう称している。 「技術やフィジカルだけでなく、メンタリティも同じくらい重要だ。その意味で、ハンジの共感力やコミュニケーション能力は天賦の才能と言える」 このマン・マネジメント(コミュニケーション能力)については、バイエルンとドイツ代表でフリックと共闘したマヌエル・ノイアーも認めるところ。そのGKは「ハンジは誰のことだって忘れない。そういうところはユップ(ハインケス)と同じ」と語っている。そう、フリックは一人ひとりと膝を突き合わせる監督で、とくに出場機会のない選手との話し合いを非常に重要視している。バイエルンで共闘し、バルセロナで2年ぶりに再会したロベルト・レバンドフスキもまた、フリックを信じてやまないひとりだ。 「僕たちは監督が背中を押してくれていること、選手を助けたいと思ってくれていることを実感できている」 ペップ・グアルディオラのような戦術家でも、ユルゲン・クロップのようなカリスマでもない。だが、そのコミュニケーション能力は両者のそれに匹敵する。現役時代からの親友で、フリック家の長女カトリンの後見人を務めているローター・マテウスは、指揮官フリックの「物事を複雑にせず、率直かつ明瞭に選手たちと話をする」姿勢に感銘を受けているようだ。 いわゆるソーシャルスキルに長けるフリックは、コーチ陣との意思疎通も抜群だ。他者の助言をくみ取れるがゆえに戦術的なアイデアやノウハウが風化することはなく、つねにブラッシュアップできている。再建への道を歩むバルセロナに、フリックは完璧にフィットする監督と言えるだろう。 文:ベンヤミン・ホフマン 訳:円賀貴子 ※ワールドサッカーダイジェスト10月17日号の記事を加筆・修正
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