AIによる「人材採用」は社員のリスキリングも変えていく【尾原和啓のHR TECH最前線】
人事組織関連のヒューマンリソーステック業界の最前線がわかるイベント「HR Tech 2024」。その注目の基調講演から、IT批評家・尾原和啓さんがHR TECHの最前線を俯瞰する短期集中コラム。 【全画像をみる】AIによる「人材採用」は社員のリスキリングも変えていく【尾原和啓のHR TECH最前線】 最終回の第3回は、企業の採用におけるAI導入は、社員のリスキリングにも関わってくるという、HRテックの近未来視点のテーマです。 ■第1回「AIエージェントで採用市場は「ジョブからスキルベース」に変わる」 ■第2回「マイクロソフトよりHRテック企業の方が「時価総額で高成長率」な時代になる理由」 採用面談みたいなところにも、AIが自動化する流れは加速していくはずです。 極論すれば、人間がインタビューするのは、採用にまつわる「本当にコアのコアの部分だけ」になる。スキルの評価みたいなものは、AIが評価できるからです。 以前、AIを使っている斡旋会社さんとアメリカで話したことがあるのですが、現段階でも、素人が採用候補にインタビューするよりも、AIを使ったインタビューの方が30倍深掘りできるって言ってます。 要は、AIを組み合わせた面接官がインタビューをすることで、「このスキルに関して、このAさんはこのぐらいの確信度だから、さらにこんな質問をぶつけてみればいかがでしょう」みたいなことができてしまうと。 聞くべき質問の提案をやってくれるし、採用候補の方の回答を聞いた上で、「ここの部分がまだ確信がないので、さらにこんな質問で深掘ってみてください」みたいな提案までできる。すると、2年目、3年目の社員が15年目の社員のように、採用候補の適正評価を深掘ることができるわけです。 AIを活用した採用プロセスは、例えばこんな世界観です AIが面接日程をスケジューリング 対話の内容とプロフィールから、面談相手を評価 評価面談をやってる間に、相手が持つスキルの希少性の試算 その評価に基づいて、インタビューをやってる最中に「この人はこのぐらいの金額でオファーして良い」という判断をリアルタイムに表示 そうすると、面談が終わる頃には、「あなたには本当にすごい能力があるので、通常の3倍の給料を出すから、ぜひうちに来てくれないか」というオファーを即時に出せたりします。面接官である入社2~3年目の若手社員が、こんなオファーを自信を持って出せる様子を想像してみてください。 さらに連想していきましょう。 採用する時点で、その人が持ってるスキルと専門性の見積もりができているわけですから、「入社する前にこの研修をAIと一緒に受けといてください」だったり、「あなたの適切なメンターはこの人だから、入社前からこの人と会っていいですよ」といったりした提案ができるわけですね。 また、今進んでいるプロジェクトにはどんなスキルが必要なんだっけ?とか、どんなタレントプールの中にあるんだっけみたいな可視化も、AIによって確実に進みます。 特に、生成AIは非構造化データに強いという特徴があります。 例えば、日々やってる仕事を入力していくと、「この作業に必要なスキルはこうですね」とか、議事録を入力していくと「議事録の内容から、皆さんが足りてるスキルはこれだけど、足りてないスキルはこうなんじゃないですか」みたいなことも言ってくれる。 僕らが履歴書を長文で、自分が何をやってきたかみたいなストーリーを書けば、それをスキルに落としてくれたりもする。これによって、自分でも見えてないスキルを見せてくれる、みたいなことも起こるわけです。