AIによる「人材採用」は社員のリスキリングも変えていく【尾原和啓のHR TECH最前線】
人材領域において「AIがスキルを可視化する」ことは求職者にもメリット
スキルの可視化に関して、今回のコーナーストーン社の話が秀逸でした コーナーストーン社は、クラウドベースでのタレントマネジメントをリードする会社です。全社を横断していろいろなジョブディスクリプションを作ったり、履歴書を見たりして、どういうスキルの需要が高くて、一方で供給が少ないのか……みたいなことを、ずっとマッピングをしています。 こうした作業によって、「この人はプログラミングができる」のような明確なスキルだけではなくて、「この人は異なる文化の人との折衝能力が高い」みたいな、ヒューマンスキルを可視化できます。 コーナーストーン社がAIによるスキルインテリジェンスサービスを提供するSkyHiveを買収したことによって、例えば、「生成AIに関する企業側のポジションはどのぐらいあるのか」を知りたければ、Indeedとかをクローリングして、世の中に出てくるジョブポストにおけるスキル分布を見たり、スキルのミスマッチを探ったりすることもできます。 募集中のポジションを分析してスキルを明確化してみると、対人関係のコラボレーションスキルだったり、デモをする時に即効性を持って質問に答えきれるみたいな能力だったり。「どういうものが必要か」「何が足りてないか」みたいなギャップを可視化できるようになってくるわけですね。
大事なことは企業と従業員との「期待値の差」を可視化すること
もう少し踏み込むと、大事なことは今持ってるスキルの可視化だけではなく、「期待値の差の可視化」だと思うんです。 従業員が自信を持っていることと、雇用者が期待してることの差を見ていくことで、組織全体でチームの力を生むようにしていく(レディネスを上げる)ことが大事なんです。 人事課の人たちは、「会社としてのパフォーマンスを上げていくためのスキルが見えていない」ところを不満に思っている人が57%いる。また、63%のリーダーたちは、会社って変化に対応しきれてないよねって思ってる。 実際、8.5兆ドル、1200兆円ぐらい、そういう変化に対応していけば埋めていけるマーケットがあるんじゃないか。 一方、可視化と変化みたいなところで、噛み合ってきたなと思うのがマイクロソフトです。非常に面白いのが、2種類のAIにおけるメジャーメント(評価)をやってるんですね。 1個がCopilotのダッシュボード。生産性の効率化ってパターンが決まってるわけですよね。ミーティングの議事録だったり、日程の調整だったり、メールを要約して、重要なものだけ判断して返信をしたりとか。 Copilotがどのぐらい稼働しているかを全社的に把握することによって、Copilotによって生産性がどのぐらい上がったかということを全部可視化できますと。 可視化するだけじゃなくて、「どういう業務でAIによる効率化が進んでるか」「各組織を比較して、どこの組織がどのぐらい効率化しているか」を見て、効率化していないところには、どう効率化すればより生産性高く動けますか、みたいなサーベイ調査をするとか。 すでに調査フォームは簡単な雛形が用意されてるから、該当するチームのメンバーにすぐ送れます。5段階評定を入力していくと、チームがどういう部分にギャップを持っているのかということがわかるようになっています。 ここで、マイクロソフトがLinkedIn(リンクトイン)を買収(2016年)していたことがプラスになってくるんです。 リンクトインにはラーニングマネジメントシステムとして、巨大な動画の資産がある。 AIに個人のスキルを分析させて、「あなたはこの動画を見れば、必要なスキルを伸ばすことができる」といったように、AIを生産的に活用していく。 それだけでなく、具体的な専門スキルを、AIがあなたの業務の中で定義する。「あなたの会社で必要なスキルってこういうものです」という定義から、それぞれの人が持ってるスキルと、今足りないところを割り出してくれる。 足りないところは、このラーニング動画を見ればいいんじゃないと教えてくれたり。 あなたの組織の近くにいるメンターが、キャリアを成長させていくためにフィットしたスキルを持ってる。だから、このメンターと会ってみたらいいんじゃない、という提案もできます。
尾原和啓