隙間時間に一人カラオケを楽しむ大学生。純粋に歌を楽しむニーズも高まっている＝鹿児島市のカラオケＳＰＯＴ　ＭＹくん荒田店

　新型コロナウイルスによる感染拡大防止で、客足が遠のいていたカラオケ店が復調の兆しをみせている。鹿児島県カラオケボックス協会（４９店舗）によると、加盟店の２０２３年の売り上げはコロナ前の９割まで回復した。飲み会離れが響き団体客の２次会利用は低調なままだが、自動精算機普及による省人化のほか、隙間時間の一人カラオケといった純粋に歌を楽しむ場として変化している。 【写真】導入が進む自動精算機。コロナ禍対策が今は省人化に一役買っている＝鹿児島市のカラオケＳＰＯＴ　ＭＹくん中央駅店

　鹿児島市西田２丁目の「カラオケＳＰＯＴ　ＭＹくん中央駅店」は、平日でも連日にぎわっている。最新曲から昔の歌謡曲まで、さまざまな楽曲を歌う声が廊下まで響いていた。 　友人３人と訪れた大学１年の大山李胤（りい）さん（１８）は、最近のヒット曲を中心に歌う。「アルバイトまで時間があるのでちょっとだけ。声を出すと気持ちがいいし、気軽に楽しめてありがたい」。同店では３０分からコースを選べ、学割もあり、「隙間時間を有意義に使えるコストパフォーマンスの良さが魅力」と話す。 　年配客の姿も多い。仲間と集まった仮屋正行さん（７５）は「コロナ禍が収束し、気軽に来られるようになった。歌えない期間は気分が沈んでいたのでよかった」と笑う。会社のＯＢでカラオケ同好会をつくっており、お互いの歌声を披露し合っていた。 　同協会によると、加盟する県内店舗の２３年の売り上げは、コロナ前の１９年比で９０．５％。同年比で６０％を下回った２０年、２１年と比べ着実に回復している。

　同協会の高江洲博幸会長は、単に客足が戻っただけではなく、コロナ下の変化が復調を後押ししているとみる。「客自身が会計する自動精算機の導入が進んだ。当初は非接触が目的だったが、結果的に人件費削減に一役買っている」 　料理の提供を廃止する代わりに、客が食べ物や飲み物を持ち込める店も増加。少子化による人手不足や最低賃金の上昇でアルバイト料金が高騰する中、少ない従業員で店舗を回せることも他業種より有利に働く。 　カラオケの定番だった２次会利用が戻らない中、利用客の意識変化もプラスに働いているという。高江洲会長は「飲み会を断る風潮が定着したのか団体客は少ない。最近は付き合いでの来店ではなく、純粋に歌うことを楽しむ客が増えている印象」と分析する。 　米津玄師さんら音域の広い難関曲に原曲キーで挑戦していた大学１年の男性（１８）は、１人で来店した。「週に１度は来る。うまい下手よりも楽しむことが大事」とマイクを握る。日本の定番レジャーは形を変えながら、憩いの場として不動の地位を築きつつある。