家でも職場でも「 どうせパート 」と呼ばれる私。103万円の壁を超えて「 働きたいけど働けない 」を制度にせいにするのはワガママですか?
先の衆院選で国民民主党が掲げた「年収の壁」の金額引き上げが注目を集めている。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。 「そのほかにガソリン税を一部軽減するトリガー条項の凍結解除といった政策を掲げた同党は議席を増やす結果になりました。玉木雄一郎代表は選挙明けの29日の記者会見で、103万円の年収の壁を178万円への引き上げるよう法案提出を急ぐ考えを示しました」。 103万円が178万円になるとすべての税金がかからないと勘違いしている人もいるようだが、それは誤りだ。 「所得税がかからないが正解です。103万円という金額はそのボーダーライン。扶養家族になっていれば、扶養者の税金負担が減ります。次の壁と呼ばれているのが130万円。これを超えると扶養からは外れることになります。社会保険料を自分で支払うことになるのです」。 「もっと働きたいのに働けない」学生や主婦たちを悩ませるこの103万円の壁。実は働き手だけでなく、雇い主をも悩ませるものだという。 「飲食店やスーパーなど、日常生活に欠かせない職場の労働力を担っている人のなかにはパートや学生バイトも多くいます。彼らは年末に差し掛かるとボーダーラインを超えないようシフトを調整する必要が出てくるのです。結果起こるのが労働力不足。皺寄せがくるのは正社員ということになります」。 最低賃金が上がったこともあり、さらに働く時間は短くなっていると推測される。今回はそんな103万円という金額に翻弄される2人の女性に話を聞いた。 ------------------------------------------------------------------------ 菅原真美子さん(仮名・42歳)は、子供2人と夫と4人暮らしだ。子供の入学をきっかけに事務のパートを始めた。 「2人の子供を育てるのに働かない選択肢はありません。とはいえ、パートなので肩身が狭いというのがリアルなところ。103万円の壁がある以上、夫からは所詮パートと言われますし、職場でもすぐに休むと腫れもの扱い。本当にツラいです」。 パートを始めるにあたり、夫とは話し合いをして103万の壁を超えないことを決めたと話す。 「パートするのはいいけど、103万は超えないほうがいい。それがお互いの認識でした。ガツンと超えるくらい働けるのならいいけれど、まだ子供は小学生でしたし、正社員としてやれるほどの自信もなかったというのが本音です」。 結果、家事育児の分担はこれまで通り、真美子さんがその多くを担うことになった。 「週3~4日勤務で1日6時間。当初は残業もなかったので9時から16時までで帰宅後に夕飯の支度など、家事をする感じでしたね。夫はその姿を見て、楽そうと思ったみたい。16時に帰れるんならいいじゃんと言われました。会社員とは責任が違うと言われたこともありましたね」。 夫からの嫌味に耐えるくらいならまだマシだった。この後真美子さんを襲ったのは、同僚たちからの冷たい仕打ちだ。 「パート先にも103万円のことは伝えてありました。でも中小企業でやることも多く、パート仲間が妊娠して辞めたり、なんだりで思ったよりも労働時間が長くなってしまったんです。それで働く時間を調整しなくてはならなくなって…。できるだけ迷惑をかけないよう、少しずつ減らしましたが、それでも12月は頻度を減らさないと103万を超えてしまう状況で…」。 このことに対して正社員たちからブーイングが起こったというのだ。 「所詮パートさんはいいよねと嫌味を言われたことは今も記憶に残っています。4人チームで2人は正社員。パートは私ともう1人。その方は103万の壁を取っ払って働くことを選んでいたので、結局3対1の関係になってしまいました」。 ー菅原さんは時間制限あり、だもんね。 ー頼んでも最後までやってもらえないし。 ー同じように働いているのに所得税も社会保険も納めていないって優遇されすぎじゃない?結婚してて子持ちってだけでいいよね。 「そんなこと私に言われても…と思いましたが、何も反論はできませんでした。税金を納めていないことも事実ですし、子供の発熱などで休んでしまったこともあって、その分の皺寄せが他の3人にいっている後ろめたさもありました」。 帰路に涙することもあったと話す真美子さん。しかし家で愚痴をこぼしても夫も同情はしてくれなかった。 「所詮パートで責任もないんだし、そんなことぐらい我慢したら?と流されてしまいました。仕事はもっとキツイもんだって比較されて。自分の意識の問題もあるんじゃないかと言われて、さらに落胆しました。私だって本当はもっと働きたい。それなのに制度があるから我慢しているのに…」。 【後編】では制度に103万の枠の中で働くパートのおかげで、年末年始に皺寄せを受けていると話すあるスーパー店員に話をさらに聞いていく。 取材・文/橋本 千紗
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