接客はアバターにお任せ―遠隔で操作、人手不足の現場の助っ人に 高齢者、すっぴんでもOK「年齢や性別、障害の有無に関係なく働ける」
「どこから来たのですか」。関西空港の到着ロビーに設置されたモニターの中から、英語の問いかけが聞こえてきた。声の主は、兵庫県淡路市のマスコットキャラクター「あわ神」のアバターだ。来日した家族連れが物珍しそうに近寄って「シンガポール」と答えると、モニター越しの会話が始まった。アバターは「淡路島はシンガポール島とほぼ同じ面積です」と紹介し、続いて観光スポットを売り込んだ。 【写真】メタバースや仲人を使い、カップル倍増計画 10年間で出生数20%以上減の鳥取で
このように、企業や施設の接客や案内をモニターに映るアバター(分身)が代行するサービスが広がってきた。アバターを操るのは、別の場所にいるスタッフだ。離れた場所ででき、通勤の負担が減って高齢者や障害者も働きやすくなる。人手不足の中でアバター人材が強力な「助っ人」となりそうだ。(共同通信=沢野林太郎) ▽ここなら年齢に関係なく働ける 関西空港にある「あわ神」のアバターを操作するのは、人材サービス大手のパソナグループの女性スタッフ(32)。実際に働いている場所は、空港から車で約1時間半の距離にある淡路市のオフィスだ。空港のモニターにはカメラやマイクが付いていて、スタッフは観光客の姿を見ながら会話をすることができる。スタッフが手を振るとアバターも同じように手を振る。 パソナと契約を結んだ淡路市の狙いは、2025年大阪・関西万博を見据えた観光PRだ。このため関西空港に今年8月、アバターの観光案内モニターを設置した。
パソナグループによると、アバターの接客サービスは従業員を雇用するのに比べて費用を約3分の1に抑えられるといい、このサービスを導入する企業や団体は約100に上る。スタッフに年齢制限はなく、淡路市のオフィスで働く約20人の中には高齢者や身体に障害のある人もいる。 横山慶子さん(65)は淡路市にいながら、愛知県に本社のある企業の受付を担当する。業務の内容は来客や荷物の受け渡しなど、多岐にわたる。年齢的に立ったり座ったりする業務は体が疲れるというが、アバターなら座ったままできるため負担も少ない。横山さんは満足そうにこう話す。「接客が好きなのでまだまだ働きたい。ここなら年齢に関係なく働ける」 アバターのキャラクターは選ぶことができ、声色や表情も自由に変えることが可能だ。横山さんは「制服を着なくてもいいし、化粧をしなくても大丈夫。すっぴんでもOK」と笑顔で話す。 ▽強みは「ぬくもりのある対応」、AIには負けない