軽トラ輸入に「待った」! 日米で自動車「プチ貿易摩擦」が勃発? 人気急上昇の「Kei」を締め出したい米国州政府の思惑
実は、重たい自動車の方が死亡事故が多い?
米国州政府が日本の軽自動車を目の敵にするのには、新たな日米自動車貿易摩擦という以外に、何か背景があるのでしょうか。 2024年8月31日付のエコノミスト誌によると、米国では1970年代のオイルショックを機に導入された自動車の燃費規制により、自動車の平均重量は1000ポンド(約450kg)、トラックは500ポンド(約225kg)軽くなりました。しかし、それに伴い交通事故による死亡者数は最大27%増加したとされています。 その反省から、米国の自動車の重量化が始まり、さらに電池パックが重たい電気自動車が普及したことで、ピックアップトラックに限らず、現在ではアメリカの新車の平均重量も4400ポンド(約2000kg)を超えています。欧州連合の新車の平均重量は3300ポンド(約1500kg)、日本では2600ポンド(1180kg)といいますから、米国の自動車が一般的に大型志向なのが分かります。 こうした歴史から軽自動車の構造に過敏になっているのかもしれません。 しかし、前述のエコノミスト誌の分析には続きがあります。確かに、自動車の重量が4000ポンド(約1800kg)を超えたあたりから乗員の死亡率はグッと減るため、重たい自動車の方が安全だということができます。 しかし、逆に4000ポンド以上の重たい車が事故を起こした場合、巻き込まれた歩行者や追突された車両の搭乗者など、相手の死亡率は軽い車が事故を起こした場合よりも高いというのです。特に車両重量が5000ポンド(約2270kg)を超え、6000ポンド、7000ポンドと増えていくにつれて相手の致死率のグラフは急カーブを描いて上昇していくことがうかがえます。 同誌は、9月5日付の追報で、自動車事故の死亡者を減らすため、自動車の速度制限を重量別に設ける提案をしています。また、同誌の記事を引用し、今後、米国では重たいピックアップトラックなどの自動車保険が高くなることを予想する声がSNSのXで散見されます。 しかし、「軽すぎる車体が乗員の死亡事故につながりやすい」という理屈で日本の軽自動車の登録が禁止されるなら、「重すぎる車体で事故相手の死亡につながりやすい」米国ならではのドッシリとした車両の登録の可否も、客観的な死亡事故リスクで決めるのが筋なのではないでしょうか。今後の行方を注視したいところです。
赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)