【凱旋門賞】シンエンペラー想定外の大敗、矢作師「答えが出ない」 凱旋の日信じ続けるしかない
方向性は間違っていない…と思いたい。先週6日の凱旋門賞で日本代表シンエンペラー(牡3、矢作)は12着。武豊騎手(55)のアイルランド馬アルリファー(牡4、J・オブライエン)も11着に敗れた。 【写真】レース直前の坂井騎手、藤田晋オーナー、矢作師 連載「ケイバラプソディー」では6度目の現地取材へ赴いた太田尚樹記者が今年の挑戦を回顧。日本競馬界の悲願達成へ、進むべき道を探った。 ◇ ◇ ◇ 黄金色のスタンドにもたれかかり“帽子の男”はしゃがみ込んだ。「倒れそう」。日本の希望を背負ったシンエンペラーは12着。矢作師は無念に声を詰まらせ、何度も首をかしげた。敗因が見いだせないからだ。 「答えが出ない。これだけ調教師をやってても分からないことだらけ。前走(愛チャンピオンS=3着)より状態ははるかにいいと思った。正直、かなり自信はあった。この馬場もちょうどいいと思っていた。瑠星(坂井騎手)もうまく誘導してくれた。今まで惨敗していない馬。逆に『どう思う?』って聞きたい」 僕もほぼ同感だ。大敗は想定外。しいて推論を挙げるなら、馬場ではなく距離への適性が出たか? 坂井騎手は「結果的に少しずつ体力をそがれた印象」と振り返った。2000メートルの前走や高速馬場のダービー(3着)では対応できたが、道悪の2400メートルではより持久力を求められる。それぐらいしか思いつけない。 ただ、日本競馬界としての方向性は間違っていないはずだ。アーモンドアイやイクイノックスをはじめ、今や国内最強馬はパリへ鼻先を向けない。近年で重視されるのは絶対能力より適性だ。たとえば昨年には良績豊富なステイゴールド系のスルーセブンシーズがG1未勝利ながら4着に健闘。今年のシンエンペラーは凱旋門賞馬の全弟という要素を備え、実際にアイルランドでは好走した。 レジェンド武豊騎手のアプローチもユニークだ。最近5年の騎乗馬4頭中3頭が欧州所属。松島正昭オーナーの支援もあり、地元の実績馬で挑んでいる。11度目のトライも阻まれたが、55歳は「いつか勝ちたい。なかなか苦戦しているけど…ジョッキーをやめられないね」と視線を上げた。 戦前に矢作師から聞いた言葉が今になってよみがえる。「こればっかりはトライアンドエラーを繰り返すしかない」。そう、不可欠なのは試行錯誤の継続だ。倒れそうになっても、倒れてはいない。凱旋の日は必ず来ると信じている。 (ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)