背骨溶ける100万人に1人の難病克服、ソフトバンク田上が涙の登板「野球できなくなるかもと」
ソフトバンク田上奏大投手(21)が難病を克服し、今季の「初登板」を果たした。9日、韓国プロ野球・NCダイノスとの3軍練習試合(みずほペイペイドーム)に4番手で登板。6回の1イニングを5球で3者凡退に仕留めた。「自分の持ち味は真っすぐ。どれだけ投げられるか、全力で行った」。最速147キロを計測。笑顔でマウンドを下りると、ベンチで泣いた。 【写真】ベンチに戻る田上。今季“初登板”に笑顔で駆け寄る井上ら 今年2月の宮崎春季キャンプ。第1クールに背部に強い痛みを感じた。病院で数度の検査の結果、「ランゲルハンス細胞組織球症」と呼ばれる疾患であることが判明。細胞組織が増殖し、あらゆる臓器などに機能障害をもたらす病気で、発症率は成人で100万人に1人とも言われる。治療法は確立しておらず、背骨が溶けるような状態になっていた田上は約半年の保存治療で復帰までこぎつけた。病名公表の意図を問われると、子供に多い病気で「頑張ろうと思ってもらえるように」と打ち明けた。 「もう野球ができなくなるかもしれないとも言われた。生きた心地がしなかったが、来年はこの悔しさをぶつけたい」。涙を流した後、そう言って笑った。 ◆ランゲルハンス細胞組織球症 感染に抵抗する役割のランゲルハンス細胞が異常な増殖を起こすことにより起きる疾患。骨周辺のしこり、歯茎の腫れ、発熱や甲状腺の膨張、呼吸障害など、さまざまな症状がみられる。自然と治まる場合もあるが、病変部の組織を取り除いたり、化学療法やステロイド注射などの治療法がある。