昭和36年生まれの男性会社員ですが「特別支給の老齢厚生年金」の対象と聞きました。具体的にどういう制度ですか?
昭和36年以前(女性は昭和41年)に生まれた方は、「特別支給の老齢厚生年金」の対象となる可能性があります。特別支給の老齢厚生年金の対象となる場合、自ら請求手続きを行うことで受給が可能です。 本記事では、特別支給の老齢厚生年金の受給要件や年金額、手続き方法、注意点などについて解説します。特別支給の老齢厚生年金について理解し、自身がその対象であるかを判断してみてください。
特別支給の老齢厚生年金とは
特別支給の老齢厚生年金とは、昭和60年の法改正によって厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に変更されたことで、特別措置として設けられた制度です。 この制度は、男性は昭和36年4月1日、女性は昭和41年4月1日以前に生まれ、一定の要件を満たす場合に対象となります。対象者は、60~64歳から(生年月日によって異なる)特別支給の老齢厚生年金を受け取ることが可能です。 本項では、特別支給の老齢厚生年金の受給要件や年金額などについて紹介します。 ■受給要件 特別支給の老齢厚生年金の受給要件は、以下のとおりです。 ・男性は昭和36年4月1日以前生まれ ・女性は昭和41年4月1日以前生まれ ・国民年金(老齢基礎年金)の受給資格期間(10年)がある ・厚生年金保険等に1年以上加入していた ・生年月日に基づいた受給開始年齢に達している ■年金額 特別支給の老齢厚生年金の受給額は「報酬比例部分」で、計算方法は次のとおりです。 <報酬比例部分> 年金額の計算の基礎となる部分で、年金の加入期間や報酬などで決まります。以下の「A+B」で報酬比例部分を求めることができます。 ・A:平成15年3月以前の加入期間 平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月以前の加入期間の月数 ・B:平成15年4月以降の加入期間 平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数 例えば、昭和38年4月1日生まれの女性の方で、2003年(平成15年)3月以前の平均標準報酬月額が30万円(期間は18年間・216ヶ月)、2003年(平成15年)4月以降の平均標準報酬額が40万円(期間は20年間・240ヶ月)とした場合、報酬比例部分の金額は以下のとおりです。 ・A:30万円×7.125/1000×216ヶ月=46万1700円 ・B:40万円×5.481/1000×240ヶ月=52万6176円 ・A+B=98万7876円 ただし、昭和16年(女性は昭和21年)4月2日以後に生まれた方も、特例として以下に該当する場合は、報酬比例部分の受給開始年齢から「報酬比例部分」と「定額部分」を合算した「特別支給の老齢厚生年金」を受給することができます。 1. 厚生年金保険の被保険者期間が44年以上(被保険者資格を喪失している場合) 2. 障害の状態(障害厚生年金の1~3級に該当する障害の程度)を申し出た(被保険者資格を喪失している場合)(※1) 3. 厚生年金保険の被保険者期間のうち、坑内員または船員であった期間が15年以上(※2) (※1)特例受給開始は申出月の翌月分から。ただし、障害年金を受給中の方は報酬比例部分の受給開始年齢にさかのぼっての開始となる。 (※2)昭和21年4月1日以前生まれの方は55歳から受給できるが、それ以後に生まれた方は受給開始年齢が段階的に引き上げとなる。 定額部分とは、特別支給の老齢厚生年金の計算の基礎となる部分で、厚生年金の加入期間に応じて決まります。定額部分の計算式(令和5年4月分から)は、以下のとおりです。 ・67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ) 1657円×生年月日に応じた率×被保険者期間の月数 ・68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ) 1652円×生年月日に応じた率×被保険者期間の月数 例えば、昭和38年4月1日生まれの女性の方で、被保険者期間が40年(480ヶ月)の場合、定額部分の計算式は「1657円×生年月日に応じた率×被保険者期間の月数」となります。 日本年金機構の「年金額の計算に用いる数値」によると、「生年月日に応じた率」は1.0です。そのため、定額部分は「1657円×1.0×480ヶ月=79万5360円」となります。 ■手続き方法 特別支給の老齢厚生年金を受給するには、自身で請求手続きを行う必要があります。手続きの流れは、以下のとおりです。 1.年金請求書と請求手続きの案内が届く(受給開始年齢に達する3ヶ月前) 2.必要書類(戸籍謄本や通帳など)を準備する 3.年金事務所もしくは年金相談センターに請求書を提出する 特別支給の老齢厚生年金の受給権は、受給開始年齢に到達した日(誕生日の前日)に発生します。したがって、請求書は受給開始年齢に到達した後に提出する必要があります。