“裸足に近い”ソールで怪我を軽減 アメリカのランシューブランド「ALTRA(アルトラ)」
2009年にアメリカ・ユタ州で誕生した「ALTRA(アルトラ)」。つま先とかかとの高低差をなくした「ゼロドロップ」シューズの先駆者として知られるブランドだ。 現在はアメリカのトレイルランニング市場の27%を占め、ブランド売り上げの60%をランニングシューズが占めるなど、群雄割拠のランニング市場で急成長を続けている。 数多のスポーツブランドがしのぎを削るなか、なぜALTRAはここまで成長を遂げたのか。 創業者のひとり、ブライアン・ベックステッド氏に、これまでのランニングシューズとの違いや、そのメカニズムを語ってもらった。
“裸足に近い”シューズが生まれた理由
ー元々、ご自身も陸上競技をされていたんですよね。 はい、12歳で陸上競技を始めて、高校まで続けていました。高校に入って初めてのクロスカントリー練習のときに出会ったのが、共同創設者のゴールデン・ハーパーです。 結局、私は疲労骨折など怪我が続き、大学では競技を続けることができませんでしたが、健康維持のために始めたトレイルランニングやウルトラマラソンにハマっていきました。 そして、私もゴールデンも、大学でランニングフォームと怪我に関する研究を行っていました。
ーお2人がブランドを創設したきっかけを教えてください。 私たちは卒業後、ゴールデンの父親の経営するランニングショップで働き始めたのですが、多くのお客様が足にトラブルを抱えていることが分かりました。話を聞くと、彼らのトラブルの多くは誤ったランニングフォームが原因だということが判明したのです。 そこで私たちは正しいランニングフォームを身につけてもらおうとレッスンを行いました。彼らには、分かりやすいように芝生の上を裸足で走ってもらって、正しいフォームを体感してもらいました。ところが芝の上では正しく走れていたのに、シューズを履いてアスファルトの上に立つと同じように走れない人がとても多かったんです。それを見て私たちは、フォームが崩れるのはシューズの構造に原因があるのではと考えました。 とはいえ、アスファルトやトレイルを裸足で走ることは現実的ではありません。裸足とシューズを履いた状態との違いを探るなか、ゴールデンが既存のランニングシューズのかかとをナイフで切り取って、つま先からかかとまでフラットなランニングシューズを自作して、試しに知人に履いてもらいました。すると、この靴がとても評判を呼び、多くの人が求めるようになったのです。 そこで私たちは、「このようなシューズを作れないか」といろいろなメーカーに提案をしました。ただ、これまでのシューズの常識からかけ離れていたのでしょう。どこからも良い返事をもらうことができなかったんです。「誰も作ってくれないのであれば、自分たちで作ろう」とブランドを立ち上げることにしました。製品ができるまでに約2年、プロトタイプを作るまでに5万ドル近くかかりました。