能登半島地震、被災地で見た「地域の足」の現状 各社が連携して運行、「現地への関心」が復興のカギになる
当然ながら従来のような人員配置は難しく、「穴水支店は火曜日と金曜日の10~14時、富来支店は毎週火曜日の9~12時の営業」(北國銀行)とのことであり、今後も町役場内で営業を続けていくかどうか、議論していくという。 バスもそれ以前から顕在化してきた運転士不足が加速したような状況であり、道路状況もあって当初は運休を余儀なくされた。 そんな中で1月25日には、金沢と輪島、珠洲、能登町を結ぶ特急バスが、復興支援も兼ねて無料で運行開始。続いて2月5日には路線バスの穴水輪島線および穴水線(穴水町―輪島市門前町)が復活した。
「特急バスは北陸新幹線が延伸開業する3月16日まで無料で、利用者の方々から感謝の言葉をいただいた。無料運行は貸切バスの事業許可があれば運転できるので、北鉄金沢バスや北鉄白山バスに応援してもらった」(北鉄奥能登バス) ■金沢方面の移動需要に対応 さらに4月22日からは、珠洲や能登町から金沢の病院に通いたいという声に応えるため、のと里山空港や穴水駅とを結ぶ便を設定。空港をハブとして輪島から金沢に向かう特急バスに乗り継ぐダイヤを組むとともに、のと鉄道を使って金沢方面に向かう需要にも応えている。
分野の垣根を越えた対策で運転士不足をカバーし、少しでも快適な移動を提供しようという姿勢に好感を抱いた。 今後については楽観視はしていない。避難した住民が戻ってくるかはわからず、それは人材にも影響してくる。奥能登に住み続けている人たちへの対応も、「避難所住まいの方が多く路線や停留所の見直しが必要」(北鉄奥能登バス)とのことだった。 一方で北國銀行は、震災前から珠洲市でVisaカードのタッチ決済を推し進め、人口あたりトップの普及率となったことを追い風に、2023年10月に開始したデジタル地域通貨「トチツーカ」のサービスを生かそうとしている。
デジタルポイント「トチポ」のサービスを珠洲市で先行導入していたのに続いて、今年4月には、日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」のサービス提供を石川県全域で開始した。 「震災を機に現金からデジタルへという意識は高まっている。家屋が倒壊しても影響が少ないので、タンス預金から移行するという動きがある」とのことで、ピンチをチャンスに変える動きとして注目したい。 ■今後の復興を左右するのは… そして両社がともに取り上げていたのが観光の話題だ。
北國銀行は「金沢や加賀に観光に来てもらうことによる消費や税収などの経済効果が、直接的にも間接的にも能登の復興につながっていくことが大切」と話し、北陸鉄道は「観光産業への支援によって交通需要が増えてくることを期待している」と語っていた。 復興が本格化するのは今後であり、地元のインフラを支える企業はその先まで見通している。その足取りが確実に進むためには、私たちの能登を思う気持ちが大きく関係しているということは言うまでもない。
森口 将之 :モビリティジャーナリスト