中国の大艦隊はどこに向かうのか――「マラッカ・ディレンマ」をめぐる戦い
大型水上艦艇の就役数が急増
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近年、中国人民解放軍(PLA)海軍(中国海軍)は空母やミサイル駆逐艦といった大型水上戦闘艦艇を多数建造している。2022年8月、日経新聞は環球時報など中国メディアの情報として、中国東北部大連の造船所において、5隻もの大型ミサイル駆逐艦(「052D型」もしくはこの改良型)が同時に建造中であると報じている ⅰ 。これは「中華イージス」とも呼ばれ、フェーズドアレイ多機能レーダーと垂直発射システム、そしてこれらを制御する先進的な戦闘指揮システムなどから構成され、高い防空能力を有する「ルーヤン(旅洋)級」ミサイル駆逐艦をさす。また、空母については現在「リャオニン(遼寧)」、「シャンドン(山東)」の2隻を運用しているが、本年6月、3隻目の「フージャン(福建)」が進水しており、これは電磁カタパルトを装備する予定である、とされている。このように近年の中国海軍は外洋で多様な任務を遂行できる「ブルー・ウォーター・ネイビー」(blue-water-navy)へと急速に変貌しつつあるが、こうした傾向は主要艦艇の就役状況を観察すると明らかになる。 (表1)は1996年から2020年の四半世紀における主要艦艇の就役数について、5年ごとに区切って示したものである ⅱ 。1990年代以降、通常型潜水艦の更新はロシアからのキロ級潜水艦購入と、ソン(宋)級、ユアン(元)級といった国産建造を並行する形で急速に進められたが、2014年ころから就役ペースが低下している ⅲ 。また、21世紀初頭まで大量に保有していた小型砲艦・ミサイル艇の更新として2004年から2009年にかけてホウベイ(紅稗)級高速ミサイル艇を60隻まとめて就役させた後、追加建造は確認されていない ⅳ 。
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後瀉桂太郎