【角田裕毅F1第9戦分析】レース中盤はステイアウトし順位を取り戻すも、ドライタイヤではブレーキに苦戦「ロックアップするか予測もつかなかった」
F1第9戦カナダGPのスタート前のセレモニーでちょっとしたハプニングが起きた。角田裕毅(RB)が国歌斉唱に遅刻した。 【写真】2024年F1第9戦カナダGP 角田裕毅(RB)の背後にエステバン・オコン(アルピーヌ)、ダニエル・リカルド(RB)が近づいた レーススチュワードは「チームは、ドライバーに適切なタイミングを伝えなかったため、遅れが生じた」として、RBに1万ユーロ(約170万円)の罰金を科した。 雨が降りしきるなかで行われた国歌斉唱。その直後にスタートしたカナダGP決勝レースは完全なウエットコンディションから、徐々に路面が乾いていくハーフウエットに変わり、最後は全車スリックタイヤを履くドライコンディションと、路面状況が刻々と変わる難しいレースとなった。 そんななか、角田はスタートで少し出遅れたものの、1回目のセーフティカーのタイミングで多くのドライバーがピットインして、新品のインターミディエイトタイヤに交換するなか、ステイアウトしてポジションを取り戻した。その後、ドライタイヤに履き替えるタイミングもチームとコミュニケーションをしっかりと取って、7番手を堅持していた。 しかし、ミディアムタイヤに交換して以降、角田はペースが上がらず、防戦一方となる。51周目にはランス・ストロール(アストンマーティン)にオーバーテイクされて8番手に後退すると、61周目にはエステバン・オコン(アルピーヌ)にかわされて9番手へ。角田の背後にはチームメイトのダニエル・リカルドがコンマ2秒差に迫っていた。 このとき、角田はある問題に悩まされていた。 「ブレーキングに苦労していて、コーナーの進入で何度もロックアップしていました。しかも、ロックアップがするかどうかの予測がなかなかつきませんでした」 チームはリカルドに援護役を任せることも考えたが、リカルドの背後にも、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)とニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)の2台が1秒差で迫っていた。そこでチームは「ユウキとレースしていい」と無線で伝える。 角田とリカルドのバトルは5周に及び、迎えた66周目のターン8のブレーキングで角田は止まりきれずにシケインをショートカット。ランオフエリアの濡れた芝生に乗ってスピンしてしまう。これで角田は14番手まで後退し、そのままフィニッシュした。 手負いの角田を援護せずにリカルドにオーバーテイクすることを許したRBの戦略は正しかったのか。結論から言えば、正しかった。というのも、角田を抜いたリカルドはその後、オコンも攻略して8位(4点)でフィニッシュしたからだ。もし角田を援護していたら、9位(2点)と10位(1点)の3点だった。 次に角田のスピンは本人が言うように、「愚かなミス」なのか。 「今日のような荒れたレースで、終盤までポイント圏内を走っていたわけですから、あの状況ではクルマをしっかりとフィニッシュさせないといけなかっただけに、それができず、がっかりしています」 角田はそう言って、自分を責めた。しかし、ブレーキに問題を抱えていたあの状況では角田がリカルドに抜かれるのは時間の問題で、10番手に落ちた角田がガスリーとヒュルケンベルグにオーバーテイクされないためには、最後の最後まで攻めなければならなかった。 攻めなければオーバーテイクされていただろう。逆に攻めれば、ミスをする可能性が高い。果たして、角田は攻めた。それを責めることはできない。 [オートスポーツweb 2024年06月10日]