日本発祥の芸術品「スカジャン」の魅力とテーラー東洋の想い
ー松山さんは世界で初めて「スカジャンの専門書」を出版されたと聞きました。 ヴィンテージ古着のブームが起きたとき、「スカジャン」の価値は現在ほど認知されていませんでした。この頃はインターネットも普及しておらず、ヴィンテージの教科書といえば海外で出版された専門書やコレクターの知識のみ。ですが、スカジャンについては専門書もなく、コレクターも詳細を把握していなかったのです。 刺繍の美しさは評価されていても、歴史背景や絵柄の種類などを詳しく掘り下げた資料がない。そこで、スカジャンの魅力と歴史的価値を多くの人に知ってもらうために「スカジャンの専門書」を作ろうと考えましたが、過去に例のないスカジャンの専門書に協力してくれる出版社などなく、1994年に「JAPANESE EMBROIDERED JACKETS」という専門書を自費出版で発行しました。 当時は「スカジャン」ってこんなに素晴らしいものなんだ、ということを伝えたい一心で動いていたと思います。スカジャンが作られた年代や絵柄のバリエーション、コレクターしか知りえない秘蔵の逸品などを書籍としてまとめたことで「スカジャン」の評価に指針が立ち、ヴィンテージの価格も高騰するようになりました。
ー専門書を自費出版するほど、「スカジャン」との出会いは強烈だったのですね。 私がスカジャンに傾倒するきっかけとなった作品はいくつかあるのですが、たとえば日本で作られアラスカの米軍基地で販売されていた白熊と犬ぞりの刺繍が入った「アラスカジャン」、刺繍ではなく版を手作業で摺り重ねて絵柄をプリントした「プリントのスカジャン」などは現存する数が極めて少なく、これらの名作の魅力を世に伝えなければ、と。 「スカジャン」を一番愛しているのは自分だと思ってしまったのです。ですから、「スカジャン」を知るための本がないなら、自分が作って伝えていくしかない。ここまで何度も強調してきましたが、「スカジャン」は日本で生まれたものだから日本人がまとめるべきだ、という使命感に駆られていたのかもしれません。