飲食店で倒れた40代男性が、身元不明の遺体になってしまった理由とは 1年以上たっても「法的には生きたまま」、無人の空き家に近隣住民は困惑
女性によると、男性は元々、自宅で両親と暮らしていた。父親は京都の有名な神社の神職だったという。20年ほど前に両親が相次いで他界した後、男性はこの家で1人暮らしを続けた。女性とはあいさつを交わす程度の間柄。だが近年は以前に増して言葉数が少なくなり、「影が薄くなったようだった」という。 女性は続ける。「忘れもしない、去年の6月12日のことです。ふと、彼の庭を見ると、自転車が見当たらないことに気づいたんですわ。いつも、夕方には自転車で出かけはって、翌朝見てみると自転車が戻ってきてるんですけど、その日は見当たらなかった。ほんで、なんかあったんかなと、警察に言いに行こうかとも考えたんですけど、たった一日のことだからと思って、行かなかったんですわ」 「そうしたら、病院のケースワーカーが訪ねて来られたんです。その人が言わはるに『前日に、男性が意識不明で倒れたんです。携帯も持っておられたし、家の住所が分かって訪ねて来たんですが。誰かご家族を知りませんか?』ってことでした」
しかしその後、病院からは何の音沙汰もなかった。男性の家族や親戚が現れることもなかった。そうこうするうちに、男性宅の郵便受けが郵便物で溢れるようになってしまった。 女性は駐在所の警察官や民生委員らと相談し、チラシや広告類を除いた上で、郵便物を預かるようになった。あくまで一時的な管理のつもりだったが、男性の消息について知る人は現れず、郵便物は増える一方。警察官に調べてもらえないか頼んだが、「事件性がないし、玄関も施錠されていてタッチできない」と言われた。 男性の郵便物からは、水道・ガスなどの公共料金が引き落とされ続けていることが判明した。もちろん、それぞれの使用量はゼロ。「冬場に水道管が凍結したら困るので、止められないか」と水道局に問い合わせたが、「家族以外からの依頼は無理です」。行政の空き家相談にも話を持ちかけたが、「1年以上たって、瓦屋根が落ちないと対応は無理ですね」との答えだった。民生委員に頼んで病院に問い合わせたものの、詳しい状況を知ることはできなかったという。