飲食店で倒れた40代男性が、身元不明の遺体になってしまった理由とは 1年以上たっても「法的には生きたまま」、無人の空き家に近隣住民は困惑
葬送の歴史に詳しい国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)の山田慎也教授によると、明治時代以降、葬送は「先祖祭祀」として家族が担うものと位置付けられてきた。第2次大戦後も、そうした制度設計が引き継がれたことが背景にあるという。 山田教授は説明する。「戦後、1948年に成立した墓地埋葬法でも、引き取り手がない場合に、行政が例外的に関わるものとされました」 だが2000年代以降、単身者の増加や家族関係の希薄化などを背景に、引き取り手のない死者が増加した。「現代は、葬送など死後の問題を家族・親族だけで担える時代ではなくなりました。血縁関係だけに頼らない形で、死後の手続きをどうするか、考えていく必要が出てきたのです」 今回「身元不明」として手続きされた男性のケースに関して、山田教授はこう指摘する。「身元の判明は死者の尊厳に関わります。親族に問い合わせるだけでなく、地域住民に確認するなどの手間をかければ、判明した可能性があるように感じます。一方で、行政の抱える負担も軽くないというのが現状です。身寄りのない死者について、誰がどこまで関わるのか、社会として共有できる認識が求められます」
突然、主人を亡くし、空き家となった男性の一軒家。死亡から1年以上が経過した今でも、郵便物は届き続けているという。京都市住宅政策課の空き家対策担当者は「法的に存命扱いであれば、その前提で改めて親族を調べるなどして、空き家状態の解決に向けて協力を求める必要がある」と話している。 * * 読者からの情報提供などを募集しております。こちらにお寄せください。 shuzai.information@kyodonews.jp