時代遅れ?1人1社応募が原則、高校卒就活の実情 外部との連携を前提にしたキャリア教育が必要
転職が当たり前の今、長期的なキャリア設計が必要
もともとこの仕組みは、高校卒で就職する人が多かった時代に効率的に企業と生徒をマッチングするために生まれたものだという。 「かつては高校卒業後に就職する若者が現在の5倍以上おり、多数の求職者と求人を短期間で効率的にマッチングする必要があったのです。また、工業高校のように就職希望者がたくさんいる高校と、数人しか就職しない普通科の高校で今や状況がまったく異なっているにもかかわらず、たくさん就職希望者がいた時代の指導がスタンダードになり続けている奇妙さがあります。 しっかりした就職をすること自体はとてもよいことですが、現在はかつてのように長期雇用慣行で大企業に就職できれば一生安泰というわけではない。40代や50代の転職希望率が20代に迫ってきている時代です。18歳での就職が人生最後の選択ではなく、最初の選択になっているわけです。 高校生と企業を短期間で効率的にマッチングしていく仕組みは、卒業後の職業人生の設計に脆弱性を生み出しているといえます」
外部との継続的連携がキャリア支援のカギに
高校卒者の離職率を細かく見ていくと、実は就職した企業の規模による差が大きい。つまり、大企業より規模の小さい中小企業のほうが離職率は高くなる傾向があるが、高校卒者の就職先としては中小企業が多いため、高校生全体の離職率は高くなりやすい。 就職する業種でも同様の構図がある。製造業と比べると宿泊業・飲食サービス業などのほうが離職率は高いが、高校生の就職先としては後者のほうが多いため、高校生の離職率は高くなりやすくなる。 こうしてみると高校卒就職者を一くくりにして離職率が高いというのは本質的でなく、規模や業種の違いから来る就職先企業の「育てる仕組みや育てる余裕のなさ」(古屋氏)が高い離職率の大きな要因といえよう。 では、高校卒者が短期離職せず、生き生きと働けるようにするにはどうすればよいだろう。 「私たちの調査では、1社だけを見て就職するより、たくさんの会社を見て悩んだうえで納得し、就職した高校生のほうがその後のキャリアは幸福になっています。つまり、就職活動の仕方によってエンゲージメントが大きく変わってくる。 一方、高校の先生はキャリアづくりの専門家ではありませんが、生徒一人ひとりの個性やバックグラウンドを把握し、進路を指し示すファシリテーターになり得る唯一の仕事です。例えば、学校の先生を起点として、キャリア教育に継続的に伴走できる外部人材を学校教育の場に招く。また、地域企業と連携して生徒が企業や仕事に接し、検討する機会を提供していくのです。 地域企業にとっても、大手企業と賃金格差が開いていく中で確実に採用していくには、インターンシップや職場見学の受け入れ、探究学習への協力などで高校と長期的に連携していくことが採用の種まきになるでしょう」