時代遅れ?1人1社応募が原則、高校卒就活の実情 外部との連携を前提にしたキャリア教育が必要
よく知られていない高校卒就職システムの実態
厚生労働省によると2025年春に卒業する高校生への求人倍率は2024年7月末時点で3.7倍となり、バブル期を超える過去最高を記録した。就職市場が大きく変わる中で、高校卒の就職活動を取り巻くシステムはアップデートされないままだ。生徒が最初に応募する企業を1社のみとする「1人1社制」の慣行は多くの地域に根強く残っている。離職率の高さや長期的なキャリア設計の課題など、高校卒就職の課題と打開策についてリクルートワークス研究所の古屋星斗氏に話を聞いた。 【写真を見る】「高校生の就職システムは非常に特殊」と語るリクルートワークス研究所の古屋星斗氏 求人倍率からわかるように、今は1人の高校卒就職者をおよそ4社が取り合っている状況だ。圧倒的な働き手不足である一方、その離職率は高い。 厚生労働省が2024年に発表したデータによると、2021年3月に高校を卒業した就職者の3年以内離職率は38.4%。近年、上昇傾向にある大卒者の34.9%と比較して高い。 さらに、リクルートワークス研究所の「高校生の就職とキャリア」の調査(2021年発表)では、半年以内に離職する高校卒者は10.7%にのぼり、4人に1人(24.1%)が卒業後に入社した会社について10点満点中「0点」と評価している。こうしたデータは、高校卒者の就職に大きなミスマッチが生じていることを示している。 この問題をはじめ、高校生の就職やキャリア支援のあり方を考えるにはまず、高校卒時の就職活動は大卒時のそれとはまったく異なる仕組みであることを知る必要がある。 「高校生の就職システムは非常に特殊で、就職活動というより就職指導という表現のほうがフィットします。要は学校が丁寧に生徒のサポートをして就職していくやり方で、高校生自身が決めるというよりは学校の先生が提案する会社の中から就職先を決めるケースがほとんどです。 基本的な仕組みとしてはハローワークと先生が紙の求人票を使い、生徒に『この会社はどうか?』と提案をして、その1社だけ面接を受けて、合格すれば内定を得られる形です。 そのため生徒は応募を検討する会社が少なく、われわれの調査では『1社だけを調べ見て、1社だけを受けて、1社に内定した人』が55.4%と過半数にも上ります」 リクルートワークス研究所の古屋星斗氏はそう説明する。 応募する企業を1社に限る慣行に代表される高校生の就職活動システムは、各都道府県の教育委員会や地元の経済団体などとの申し合わせで決められている。 これは学校が生徒に安心して就職できる企業を紹介する狙いもあるが、教員は大卒者で、その多くが高校卒業時に就職活動をしたことがない。そのため高校卒者の就職システムを教員が知るのは高校卒で就職する生徒がいる高校に赴任してから、という事態になりやすい。 つまり、必ずしも高校卒就職に詳しくない高校の先生が就職指導を担っているという問題もあるわけだ。