真心ブラザーズ「なくても死ぬわけではないけど、こういう喜びが必要なんだ」確信に変わったコロナ禍の音楽への矜持
『どか~ん』(1990年)や『サマーヌード』(1995年)、『拝啓、ジョン・レノン』(1996年)といった、色あせない名曲を送り出してきた2人組バンド、真心ブラザーズがデビュー35周年を迎える。2014年に自身のレーベル「Do Thing Recordings」を設立し、今夏も音楽フェスに参戦するなど、精力的に活動を続けているYO‐KINGさんと桜井秀俊さんに、真心ブラザーズにとっての「THE CHANGE」について語ってもらった。 ■【画像】真心ブラザーズ35周年アルバムに込めた想いYO-KINGと桜井秀俊の貴重なアザーカット 結成から6年。当時の2人が、ついに本気を出して制作した『KING OF ROCK』と『サマーヌード』は、音楽的評価だけでなくセールス的にもヒットとなり、真心ブラザーズの存在感を決定づけた。 デビュー35周年を記念した19枚目のアルバム『SQUEEZE and RELEASE』は、熟練ならではのスキルに裏打ちされた“すごみ”と、『KING OF ROCK』をほうふつとさせる力強さや良い意味での荒々しさを備えた作品に仕上がっている。 YO‐KING 「35周年ということもあって、真心にとっての“THE CHANGE”のひとつでもある『KING OF ROCK』を念頭に入れて制作したところもありました。アルバムは、今作のようにテーマを決めて作り進めるときもあれば、そうでないときもありますね」 桜井秀俊 「作りためてきた未発表の楽曲を並べてみて、そこから“今回のアルバムはこんな感じかな”って、ポイントを詰めていくこともあります」
当たり前じゃない日常に直面したそのとき、ふたりが感じたこと
ポップミュージックの宿命として、時代の空気感と作品は切り離せない。真心ブラザーズは、時代やそのときどきの空気との距離をどう取ってきたのだろう。 世界的パンデミックだった新型コロナウイルス感染症禍(以下、コロナ禍)を経て生まれた感情や気づきもまた、どんな状況であっても前向きさを失わない真心ブラザーズからのギフトのような、18枚目のアルバム『TODAY』として結実している。 YO-KING 「“距離はこれくらいにしておこう”みたいなルールはないかもしれませんね。それより、自分から何が出てくるかが大事。それを自然に任せるようにしてます」 桜井秀俊 「時代の空気などを特に意識していなくても、過去の作品とかを聴くと、“やっぱりなんだかんだ、あのころの空気の中で生きてたんだな”っていうのは分かっちゃうんです。それは歌詞に限らず、サウンドの流行(はや)りみたいな部分にもあります。女性のメイクでも、“あら、私ってこんなに眉毛太かったの”みたいなことってあると思うんですよ(笑)。頑張って流行にくらいつこうとしなくても、その中で生きていればそういうものは閉じ込められるんだろうなって」 YO‐KING 「そうね。あと、自分の年齢とか人生においてのステージなんかも作品に出てしまうと思います。結局、なにかを表現するっていうのは、その時代の中にいることだし、それに対してどう反射して、どう形にしていくかという作業なんでしょうね。 そういう意味では、2年前のアルバム『TODAY』は、コロナ禍真っ最中だったので、あの当時の閉塞感みたいなものへのカウンターにならざるを得ないだろうと感じながらつくってました。個人的に “人ってこんなに変わるのか”という経験もしましたから」 桜井秀俊 「誰にとっても衝撃的でしたよね。全世界で同時にパニックみたいになるなんて、生きていて一度遭遇するかしないかという経験だと思うんです。第一次世界大戦ですら、全世界までには影響していませんから。 僕はと言えば、音楽を含めたお祭りみたいなものが心底好きなんだなと自覚しました。お客さんがコール&レスポンスしてくれたり、のびのびと嬉しそうにしている様が本当に好きというか。“なくても死ぬわけではないけど、ただご飯食べてるだけじゃ人間はダメなんだ”とか、“こういう喜びが必要なんだ”ってことが確信に変わったというか。これから、もっと大切に生きていこうという風に思いましたね」 真心ブラザーズ 1989 年、 大学在学中、音楽サークルの先輩であるYO‐KING(1967年7月14日生まれ、東京都出身)と後輩の桜井秀俊(1968年6月6日生まれ、広島県生まれ神奈川県育ち)で結成。バラエティ番組『パラダイスGOGO!!』内の“勝ち抜きフォーク合戦”(1989年・フジテレビ系) で10週連続を勝ち抜き、同年9 月にシングル『うみ』でデビュー。’90年の『どか~ん』がヒットとなり、人気アーティストの仲間入りを果たす。同年発売の『サマーヌード』は当時にヒットしただけでなく、’13年に放送された山下智久主演のドラマ『SUMMER NUDE』(フジテレビ系)では本楽曲をモチーフとして制作されるなど、夏の定番人気曲となっている。コンスタントに作品を発表し、ライブツアーを重ねている。’24年11月4日の神奈川県「SUPERNOVA KAWASAKI」を皮切りに、新アルバムを携えた全国ライブ・ツアー『SQUEEZE and RELEASE』を開催する。 キツカワユウコ
キツカワユウコ
【関連記事】
- ■【続きはコチラ】真心デビュー35周年、YO-KINGと桜井秀俊のそれぞれにとっての転機
- ■【最初から読む】真心ブラザーズは“学生時代の思い出づくり”今年35周年で明かす結成秘話「ずっとやっていくなんて思ってもみなかったんですよね」(YO‐KING)
- ■【#2】「続ける覚悟が決まってできた」デビュー35周年の真心ブラザーズ、夏の名曲『サマーヌード』の制作秘話
- ■ソロ活動10周年・ファンキー加藤が感じていたファンモンを超えられないジレンマ「コンプレックスの塊、いま思うと恥ずかしいダダもこねた」
- ■m.c.A・T、プロデューサーとしてDA PUMPが「成長していくのをずっと横で見ていた」“踊れる曲”を意識した制作