【試乗記】BMW iX2は「後席や荷室を犠牲にしないクーペSUV」の電気自動車
SUVの「S」は「スポーツ」を意味するはずだが、このカテゴリーに属するクルマの多くは特にスポーティというわけではない。これに対処し、BMWは小型SUVセグメントにもう少しスリルを加えようと、2018年に発表した初代「X2」に、一般的なSUVより低いルーフと、標準的なクルマに近いダイナミクスを与えた。その最新世代モデルでは、電気自動車(EV)バージョンの「iX2」を追加し、さらにダイナミックな一歩を踏み出した。筆者は英国の発表会でその走りを確認した。 【画像】小型電動SUV「BMW iX2」 先代モデルのX2は、BMWの最小SUVだった「X1」の全高を低くしただけのクルマのように見えたが、二代目となる新型X2のデザインは、先にデビューした現行型X1(こちらは三代目にあたる)から、より大胆な差異化が図られている。最近の「クーペSUV」の流行からいくつかの要素を取り入れつつも、ありがたいことに後部座席と荷室は十分な空間が確保されている。横から見ると、後部ドアのウエストラインが後端でわずかに跳ね上がっているため、ルーフの傾斜が強調されているが、実は見た目の印象ほど下がっているわけではないのだ。 フロントも最近のトレンドに則り、エッジの立った鋭角的なスタイリングが採用されており、バンパーの下端はまるでスプリッターが装着されているように見える。しかし、BMWの特徴的な「キドニーグリル」は、同社の最新EVモデルである「iX」や「i4」とは異なり、ノーズ全体を支配するほどではない。最近のBMW車ではグリルの拡大が始末に負えなくなっているので、これは間違いなく朗報だ。BMWのもう1つのEVである「i5」も同様に控えめなフロントグリルを採用しており、それによって全体がより好ましく見える。新型X2のデザインは、すべてのクーペSUVが不可避な「少し背が高すぎる」感はあるものの、全体的にスポーティな外観を達成している。
電動ドライブトレインと航続距離
■電動ドライブトレインと航続距離 新型X2の大きなニュースは、電動ドライブトレインを採用するiX2が新たに登場したことだが、内燃エンジンを搭載するX2のほうにも48Vマイルドハイブリッドを採用する2つの仕様がある。これらは発表会には用意されていなかった。BMWがEVを重視していることの表れだろう。iX2には2種類の選択肢が設定されている。前輪のみを駆動する最高出力150kW/204psの「eDrive20」と、4輪駆動で230kW/313psを発揮する「xDrive30」だ。英国市場向けでは、X1やiX1とは異なり、X2もiX2もすべて「M Sport」仕様となる(日本では2024年5月31日まで「iX2 xDrive30 M Sport」のプレオーダーを受付中) しかし、どちらのモデルも搭載するバッテリーの容量は64.8kWhと共通で、今となってはこのクラスとしてはやや少ない。現在、例えばプジョーは「e-3008」に最低でも73kWhのバッテリーを搭載している。それに比べると、iX2の64.8kWhはケチ臭く感じられるというものだ。一度の満充電で走行可能な距離(航続距離)は、国際基準のWLTPモードで、eDrive20が439~478km、xDrive30は417~449km。フォルクスワーゲンは最新モデルの「ID.3 GTX」で79kWhのバッテリーを新たに採用した。「ID.7 GTX ツアラー」にはさらに容量の大きな86kWhのバッテリーを搭載している。その航続距離はWLTPモードで最大607kmだ。この点に関して、BMW iX2は競合車に遅れを取っている。BMWのiXやi4、i5はすべて航続距離がもっと長いし、テスラの小型SUV「モデルY」も同等かそれ以上だ。iX2は、依然として内燃エンジンを搭載するX2と共通のプラットフォームが足かせとなっている。