テスラの“車両分解”で見えた設計の奇想天外、三洋貿易が運営する「EVに関する情報発信の聖地」
テスラはECUに実装しているチップを内製している。日本のメーカーでは内製率は3割と言われるが、テスラや中国BYDでは6~7割に達するという。内製には当然リスクも伴うが、新しい技術に迅速に対応できるメリットもある。 「モデルY 2020」に搭載されて話題になった「オクトバルブ」も置かれていた。8つの穴を持つバルブユニットだ。 一般に空調やパワートレイン、電池パックはそれぞれ独立した冷却回路を持つが、オクトバルブの発明で冷却水が流れる経路を変えながら、車両全体で熱を管理することができるようになった。
部品が減り、軽量化、コストダウンが可能になる。結果的に航続距離の延長にもつながる。マスク氏自身も絶賛したという部品だが、「オクト」を意味するタコの図柄もあしらえる。「こうした遊び心に彼らの余裕を感じる」と光部部長はため息をつく。 ■「宏光MINI」は徹底的なコスト削減 展示された部品一つひとつを見比べていくと、各メーカーの思想の違いが見て取れる。 バッテリーから供給される直流電力を交流電力へ変換する装置のインバーターは熱を発する。テスラでは半導体を冷やすための冷却フィン(突起物)を立てて表面積を大きくし、冷却機能を高めている。
一方、上汽通用五菱汽車(中国)の格安小型EV「宏光MINI」では、空冷方式を採用している。「パソコンのような部品で、これで本当に冷えるのか。おそらくリスクもあると思うが、コストダウンを優先している。こうした発想は日本のメーカーにはない」(光部部長)。 シートの構造を見ても、宏光MINIはかなり簡素化しており、使う部品も徹底的に減らしてコスト削減に挑んでいる。こうした設計思想の違いは、データだけからでは実感として伝わらず、分解して始めてわかるものだ。
三洋貿易は2016年にアメリカのエンジニアリング会社、ケアソフト社の日本総代理店となった。販売しているのはケアソフト社の自動車ベンチマークサービスだ。EVをはじめとした最新車両を分解・解析し、得られた情報をデータベース化してベンチマークデータとして提供している。 自動車関連メーカーは当然、自ら競合商品を分解して研究を深めている。だが、EV化の流れが加速する中では、新興メーカーが次々に立ち上がり、新しい技術や製品が現れては消えていく。