孤立した褐色矮星「W1935」でオーロラが発生している可能性 理由は謎
美しい天文現象である「オーロラ」は、地球以外の天体でも観測されています。オーロラは恒星から放出される荷電粒子(電気を帯びた粒子)と大気との衝突で発生する現象であるため、近くに恒星がない天体でのオーロラの発生は予測されていませんでした。 今日の宇宙画像 しかし、アメリカ自然史博物館のJackie Faherty氏などの研究チームは、恒星の周辺を公転しておらず、孤立している褐色矮星「W1935」に、オーロラと思われる赤外線の発光を観測しました。孤立した褐色矮星でオーロラが観測されたのはこれが初めてです。この発見は予想外であり、その発生理由が注目されています。
■「オーロラ」は恒星活動と関連している
「オーロラ」は視覚的に美しく、知名度の高い天文現象です。オーロラは大気を構成する分子に宇宙から降り注ぐ高速の荷電粒子が衝突することで発生します。この理由から、オーロラは地球以外でも大気が存在する天体で発生します。例えば太陽系の惑星では、濃い大気が存在しない水星を除いた全ての惑星でオーロラの発生が確認されています。 オーロラの発生には大気と共に、高速かつ大量の荷電粒子が必要となります。太陽系における大量の荷電粒子の源は太陽です。これは他の恒星でも同じことが言えるため、太陽系以外の惑星系でもオーロラの発生が観測されています。裏を返せば、近くに恒星がない天体の場合、オーロラも観測できないことになります。
■孤立した褐色矮星「W1935」でオーロラを観測
Faherty氏らの研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」を使用し、12個の褐色矮星の観測を行いました。褐色矮星は木星のような巨大ガス惑星と太陽のような恒星との中間的な性質を持つ天体とされており、その性質が注目されています。 Faherty氏らが観測した12個の褐色矮星には、お互いの性質が似ている「W1935」と「W2220」が含まれていました。どちらも近くに恒星がない孤立した褐色矮星であり、非常に低温です。このような低温の褐色矮星の大気中にはメタンが多く含まれていることが知られており、これはウェッブ望遠鏡が観測できる赤外線の波長で見つけることができます。実際に、W2220の観測ではメタン分子によって特定の波長が吸収され、その分だけ暗くなった赤外線が予測通り観測されました。 しかし、クローンとも例えられるほど似ているはずのW1935では、メタン分子による赤外線の吸収ではなく、メタン分子から赤外線が放出されているという予想外な観測結果が得られました。大気を構成する分子からの発光であることから、これはオーロラを観測していることになります。 そこで、それぞれの大気の温度をシミュレーションしたところ、W2220は予想通り高度が上がるほど気温が低下するのに対し、W1935では高度が上がるほど気温が上昇するという逆転現象が見られました。このような気温の逆転現象は地球の成層圏でも観察されており、近くに恒星のような熱源がある場合には不思議ではない現象です。しかし、孤立した褐色矮星であるはずのW1935で発生するのは不可解と言えます。