孤立した褐色矮星「W1935」でオーロラが発生している可能性 理由は謎
■発生理由の解明はこれから
Faherty氏らは、W1935でオーロラが発生している理由は今のところ不明としつつ、いくつかの推測を提示しています。 1つ目は、W1935に活発な活動をしている衛星があるという可能性です。木星のイオや土星のエンケラドゥスのような衛星は、物質を宇宙空間へと噴出する活発な活動が確認されており、噴出した物質が衝突することでオーロラが発生します。木星や土星の場合、太陽からの荷電粒子もオーロラ発生の理由となっていますが、近くに恒星がないW1935では、これがオーロラ発生の唯一の理由となっているのかもしれません。 2つ目は、W1935の内部の熱源が大気を加熱し、その熱エネルギーがオーロラを発生させているという説です。顕著な大気の温度逆転現象は木星や土星でも観察されており、太陽からの熱だけでは説明できないことがすでに分かっています。惑星内部の熱(※)が大気循環で外側へと輸送されているとすればこの逆転現象を説明できる、というのがこの説です。ただし、木星や土星に関しては大気上層部の加熱はオーロラによるものであるという説のほうが支持されています。そのため、W1935における熱とオーロラの関係は逆である可能性があります。 ※…内部の熱源についての詳細は不明ですが、惑星が重力によってわずかに潰れることや、惑星内部の対流による重力エネルギーが熱エネルギーに変換されることなどが想定されています。 3つ目は星間プラズマとの衝突です。これについては詳細はほとんど分かっていませんが、近くに恒星がない場合の荷電粒子の発生源としては最も有力な候補となります。 どの説が正しいのか、あるいは他の理由でW1935のオーロラが発生しているのかどうかは現時点では不明ですが、いずれにしても新たな謎がもたらされたことは、ウェッブ望遠鏡がとても高性能であることを示しています。W1935のオーロラは温度に換算すると約200℃であり、これは観測された中で最も温度の低いオーロラです。このようなオーロラの観測は難しいため、ウェッブ望遠鏡の活躍を示す1つの成果となるでしょう。 Source NASA Webb Telescope Team. “NASA’s Webb Finds Signs of Possible Aurorae on Isolated Brown Dwarf”. (NASA)
彩恵りり