神田神保町:伝統とサブカル文化が隣り合う「世界一」の古書街
「大屋書房」(明治15年創業)は、江戸時代に刊行された「全てのジャンル」を扱う。赤本・青本・黒本、黄表紙、洒落本などの娯楽本から浮世絵、錦絵までの豊富なコレクションを誇る。4代店主の纐纈(こうけつ)くりさんは、妖怪を扱った和本のコレクションに力を入れているとのことで、店頭には江戸時代の妖怪資料321点を掲載した「妖怪カタログ」が平積みされていた。
「一誠堂書店」(明治36年創業)は、古典籍(和本、巻物、古地図)と洋古書を扱う。主要取引先には国立国会図書館から国公立・私立の図書館、美術館、ハーバード大学、ケンブリッジ大学、大英図書館など、そうそうたる名前が並ぶ。1階は和書セクションで、立派な大理石の階段を上ると、まず目に入るのは洋書セクションだ。日本をはじめとする東洋全般から古代ギリシャ・ローマ関連の本まで、背表紙を眺めるだけで、世界一周のタイムトラベルをしている気分になる。西洋・東洋美術関連の本も豊富だ。
岩波書店創業の地には、「神保町ブックセンター」(岩波書店アネックス)がある。岩波の本がそろう書店、喫茶店、コワーキングスペースの複合施設だ。外付けの階段を上ると、明治40(1907)年創業の「秦川堂(しんせんどう)書店」の入り口だ。豊富な古地図のコレクションで知られるが、鉄道関係や産業史にも力を入れる。500円から購入できる古い絵葉書など手頃な値段の商品もあるので、ギフトとして選ぶのも楽しい。
北沢ビル:洋古書と子どもの本
明治35(1902)年創業の「北沢書店」は自社ビルの2階にある。店内は、大きな美しい書斎のような雰囲気で、英米文学を主に、人文科学系分野の1万冊以上の本が並ぶ。数人の客がゆっくりと店内を回遊して書棚の本を吟味している。オーストラリア・メルボルンからやって来た青年は、2度目の訪日だが神保町は初めてだという。北沢書店オリジナルの蔵書票、アンティークの絵葉書やカードを熱心に眺めていた。自分のためにちょっとした思い出の品がほしいそうだ。 北沢ビル1階は子どもの本専門店「Book House Cafe」だ。最新刊から稀少な本まで約12000冊の絵本・児童書がそろい、絵本の原画展や紙芝居など、さまざまなイベントが開催される。特製カレーなどランチメニューがあるカフェが併設され、夜8時からはカフェの奥で小さなバー「Lilliput」が開店する。北沢ビルの1階と2階では、全く異なる豊かな時間が流れているのだ。