産廃場周辺、やまぬ水質汚染 行政指導は4度目 不安募らせる住民「状況悪化するだけ」
広島県三原市本郷町南方の民間の産業廃棄物最終処分場を巡り、処分場内から染み出た水の汚れが法定の基準値を上回る事態が後を絶たない。広島県は11月、管理者のJAB協同組合(東京)に2024年6月以降で4度目の行政指導を出した。周辺住民たちは生活環境の悪化に不安を募らせ、行政への訴えを強めている。 【写真】排水が流入する日名内川の水を集めたペットボトルや産業廃棄物最終処分場の入り口
農家、田植えを断念
産廃の搬入が停止している処分場。排水が流入する日名内川近くの農業男性宅には、茶色く濁った水が入った数十本のペットボトルが並ぶ。水質の変化を確認できるよう採水を続けている。 周辺の農家5世帯は今季、日名内川の汚染を危ぶみ計約1・5ヘクタールで田植えを断念した。住民の要望を受けた市は9月、上流から水田に取水できるよう水路を改良。下流側の水田へも届けるため、住民が自ら整備した新たな用水路も今月完成した。 ただ男性の表情はさえない。「事業者からこれまで何の説明もなく、県が行政指導をしても搬入が再開される。今のままでは状況が悪化するだけだ」
立ち入り検査などを要望
県による最初の行政指導は24年6月。水の汚れ具合の指標となる生物化学的酸素要求量(BOD)が基準値を上回ったためだった。しかし組合は必要な対策をせず産廃の搬入などを続け、同7月に2度目の指導。水質基準の最大1・8倍の鉛を検出したとして25年8月、3度目に至った。 BODが再び超過したとして指導が出た11月11日、地元の町内会や住民団体は市役所を急いで訪れた。10月に施行した市水源保全条例に基づく処分場への立ち入り検査や、周辺の水質検査の強化を要望した。 条例では、水質汚濁防止法の排出基準を守るよう事業者に求める。市生活環境課は「同法の基準値を超えれば立ち入り検査をする」とし、処分場周辺の水質検査の回数を増やして監視を強める。
「行政処分を視野」
住民団体などは13日に県にも陳情し、処分場内の水質の科学的な検証や生活環境を守る対策の必要性を訴えた。22年9月の稼働から度重なる水質の基準値超えに対し、県産業廃棄物対策課は「重大かつ深刻に受け止める」と強調。「改善がみられない場合は、操業停止などの行政処分を視野に入れる」としている。
中国新聞社