インバウンド客が加賀友禅工房の体験に魅了される理由、工芸職人が伝える「ホンモノ」を取材した
美意識への共感で購入も
訪日外国人の受け入れでは、体験を通じて購入につながるケースもあるという。加賀友禅は全て手作業で行われるため高価になるが、毎田さん「加賀友禅の美しさに感銘を受けて、手元に置いておきたいと思われているようです」と明かす。 着物は、文字通り「着る物」だが、工芸品としてのその美しさは万国共通。煌びやかな京友禅とは異なる、外を濃く中心を淡く染める「外ぼかし」や「虫喰い」の技法を用いた繊細さに芸術的な価値を見出す人は少なくない。 毎田さんは「実用性とともに鑑賞にも耐えうるというのは日本人の価値観であり、着物の価値でもあるんです。着ていたものを脱いで、それを掛けた風景もアートになる。そういう生活文化は古くから日本にありました。作り手としても、着ている時、掛けている時、両方で美しいく見えるように作ってるんです」と話す。 外国人は、生活の中で着物を着ることはまずないが、購入するということは、「加賀友禅の美意識への共感の一つの行動なのでしょう」。 観光客にとって、毎田染画工芸が魅力的なのは、いわゆる観光工芸館のように観光地化されていないところだ。「生の作家が、ここで創作しているリアルさに人の心は動く」と毎田さん。毎田さん自身、若い頃にスペインに旅行に行ったとき、歩き疲れて入ったバールで、知らない地元のおじさんに一杯おごってもらったことがリアルに印象に残っていると振り返った。 北陸新幹線の金沢/敦賀が開業した。毎田さんは「外国人、日本人に限らず、もっと北陸を周遊してもらえるようになればいいですね」と期待をかける。外国人だけでなく、本来は日本人がもっと加賀友禅の価値を知るべきなのかもしれない。 トラベルジャーナリスト 山田友樹
トラベルボイス編集部