MRI検査で早期発見は難しい/医療ジャーナリスト・安達純子
~新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防13 認知症のひとつアルツハイマー病に対し、2024年7月、MRI(磁気共鳴学法)においてAIを用いた脳容積ソフトが開発された。従来の方法よりも、短時間で正確に脳の107領域の容積を調べることができる。つまり、認知症で萎縮した脳の状態をMRIでより正確に把握することが可能になったのだ。ならば、早期発見のための早期診断にも期待が膨らむ。 「このソフトウエアは、アルツハイマー病の診断で今後応用するためのスタートラインについたばかりです。すぐに早期発見に応用するのは難しいといえます」とは、順天堂大学保健医療学診療放射線学科の後藤政実先任准教授。先の新しいソフト開発のメンバーで、MRI研究の専門家である。 「早期発見には、軽度認知機能障害(MCI)になる可能性を示す特徴的な脳の変化をAIに機械学習させなければなりません。それには時間がかかると思います」 MCIはアルツハイマー病の前段階といわれ、放っておくと1年後には1割程度が認知症へ移行するといわれる。また、MCIになるよりも早い段階から海馬の神経損傷が始まっていると指摘されている。しかし、MRI画像からAIが学習できるほど特徴的な異常があるのかどうかまだわからない面があり、大きな研究テーマになっているだけに、AIならではの進化は期待できるという。 「AIの学習のデータが増えると、人間が気づいていない部分を発見できる可能性があります。将来的には、MCIになる前の兆候も知ることが可能になるかもしれません」と後藤先任准教授は話す。