皇室と軽井沢「戦争を忘れない」繰り返し“開拓地”を訪れる理由とは【皇室a Moment】
実際、陛下はご両親とたびたび大日向に足を運び、引き揚げや開拓地の歩みを理解されてきました。 ――陛下や秋篠宮さまは、こうして子どもの頃から戦争やその後の歴史について学んでこられたんですね。
今年5月、上皇ご夫妻は栃木県の日光を訪問されましたが、その時の取材の場所は、上皇さまが戦争中に疎開した「田母沢御用邸」の庭でした。
そして8月の静養は、大日向のキャベツ畑を散策されるシーンです。取材の設定に“戦争の記憶を忘れてはならない”というメッセージが込められているのではないかと思います。 いま「開拓地」と聞いても、戦後79年を経て親から子へ、子から孫へと世代が移り、そこが旧満州など海外から引き揚げてきた人たちが入植して切り拓いた地――という記憶は薄れつつあります。その歴史や経緯に気付かせてくれるのが上皇ご夫妻の訪問で、そこを訪ねる意味や、戦争を次の世代に伝えようとされるお二人の気持ちを思います。 ――軽井沢というと、観光地としても上皇ご夫妻のゆかりの地としても有名ですけれども、そのすぐ近くにこうして大変な苦労の上に切り拓かれた大日向開拓地があるということは忘れてはならないと思いました。そして上皇ご夫妻が毎年訪問される意味、思いを、私たちもしっかり受け止めていきたいと感じました。 【井上茂男(いのうえ・しげお)】 日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)