ロシア軍、シリアからの大規模撤収を開始 欧米当局者
(CNN) シリアのアサド大統領の失脚を受け、ロシアが軍装備品や兵員の大規模撤収を始めたことが分かった。諜報(ちょうほう)に詳しい米当局者2人と西側当局者1人が明らかにした。 【画像】装備品を積載するロシア軍用機を示す衛星画像 当局者らはロシアの撤収について、大規模かつ重要な動きだと指摘。撤収が始まったのは先週だが、恒久的なものになるかどうかは不明だとの見方を示した。 欧米の諜報が示唆するところでは、ロシアの当局者は現在、シリアの実権を掌握した主要反体制派「シャーム解放機構」(HTS)が一部主要基地へのロシアの残留を認める何らかの交渉による解決に前向きかどうか見極めている。候補となる基地の中には、ラタキアのフメイミム空軍基地やタルトゥスの港湾施設も含まれるという。 クレムリン(ロシア大統領府)のペスコフ報道官は先週の記者会見で、シリア首都ダマスカスの反体制派と接触していることを明らかにし、「現地の支配勢力との接触を維持する必要がある。我々はシリアに施設や人員を配置しているからだ」と述べていた。 米当局者の2人によると、ロシアは海軍の資産をシリアからリビアに移動させ始めた。別の国防当局者によれば、ロシア政府はリビア国民軍のハフタル司令官への圧力を強め、ベンガジの港湾に対するロシアの権益を確保するよう求めているという。 当局者によれば、リビアの港湾を失い、シリアのタルトゥスも放棄せざるを得ない状況になれば、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の南側面に対して戦力を投射する地中海の港湾を失うことになる。たとえ一時的にでもタルトゥスを失えば、ロシアとアフリカの間で違法物資を輸送するロシアの試みは一段と難しくなる見通しだという。 航空関係の記録や人工衛星画像には、ロシア非常事態省に登録された貨物機がここ1週間足らずの間に少なくとも7回、リビアのアルカディム航空基地に到着したことも示されている。歴史的に、アルカディム航空基地はアフリカにおけるロシアの作戦拠点となっており、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が戦争犯罪に問われたスーダンの準軍事組織に兵器を供与する際にも、この基地が使われた。 CNNは先週、米宇宙企業マクサーが13日午前に収集した人工衛星画像をもとに、ロシアは航空機に貨物を積み込んでシリアの軍事基地を離れる準備を進めている様子だと報じていた。 フメイミム空軍基地には13日の時点で、2機のAN124大型輸送機が駐機していた。両機ともノーズコーンが開いており、貨物の積み込み準備が整った状態とみられる。同基地ではおそらく輸送の準備としてKa52攻撃ヘリコプターが解体されており、ロシアの地対空ミサイルシステム「S400」の部品の積載準備が進められている様子も確認できる。