見上愛“愛莉”の葛藤が辛すぎる…登場人物に完璧であることを求めない、ドラマ『マイダイアリー』の魅力とは? 第4話レビュー
優希の笑顔を引き出したもの
愛莉が優希の似顔絵を描き、本人に渡したいという思いを叶えられるよう、和沙は手伝うことを決めた。彼女はライオンの着ぐるみを着た状態であれば、愛莉が優希に似顔絵を描いて渡せるのではないかと考えた。 「喋りづらいことってあるっしょ、人間として。でも喋りやすいことってあるっしょ、ライオンとして」 自分の大切な思いを伝えるときは相手の顔を見て、直接言う方が伝わりやすいし、重要なことは会って話すべきという考え方は社会に根付いている。そうはいっても、相手にストレートに伝えられることばかりではない。 愛莉はライオンになりきることで優希の似顔絵を描き、渡すことができた。その結果、優希に喜んでもらえただけでなく、「嬉しい。こんな綺麗に描いてもらえて」と聞きたかった言葉を言ってもらえた。絵には作者の思いが投影されるといわれるが、優希は送り主のあたたかい思いを受け取り、笑顔になったのだろう。
すべてを完璧にこなせなくてもいい
本作では全体を通して、登場人物に完璧であることを求めたり、無理強いをしない。前話でまひる(吉川愛)は、過去のトラウマ舞台となった駅の近くで開催される推しのイベントに結局行けなかったし、本話で優希の生徒である遥斗(相澤壮太)は、好意を抱く女の子のために缶バッチをもらいに遊園地に行けなかった。 愛莉もバイト先の先輩の協力のもと、ライオンの着ぐるみで姿をかくして優希に似顔絵を渡したし、自分のあいまいな気持ちに答えを出すことを留保し、そのまま受け入れた。 すべてを完璧にこなせなくてもいいと、本作は肯定してくれる。自分が過度に苦しまない範囲で一歩踏み出すことで、他者の優しさに支えられ、得られる幸せがあることを教えてくれているようだ。 (文・西田梨紗)
西田梨紗