コミュニティバスで国宝を拝めるってマジ? 松阪市の鈴の音バスで行ってみた!
■いったいどんな豪族が?
2000年4月に出土が発表された船形埴輪は全国でも類例のない、王の権威を示すつえ「威杖」(いじょう) などを模した威儀具を装着できるパーツ式の構造となっている。船の上にこうしたものが載っている様子は、これまでは線刻画などでしか確認されていなかった。 また大きさもこれまで全国で出土した同種の埴輪の中では最大の全長1.4mである。他にも船形埴輪が台座となる円筒埴輪とセットで出土されたり、船首側と船尾側の甲板に障壁でそれぞれ区切られた空間が初めて確認されたりと、注目すべき点が多く発見された。 館内には出土された埴輪が展示されているほか、企画展示やロビーには過去に松阪市で行われた発掘調査の様子や文化財センターが主催した行事の写真展示などがある。またホールに展示されている本物の土器や埴輪は実際に手で触ることも可能だ。
■古墳へも鈴の音バスで!
そしておすすめしたいのは、ここから宝塚古墳までバスで行くことができるということだ。この「クラギ文化ホール」バス停から鈴の音バス左回り線に乗車して約30分、「宝塚古墳公園前」バス停で下車すると、道路の反対側に小高い丘陵地が確認できる。ここが宝塚古墳公園である。1999年から宝塚古墳を保存・管理するための発掘調査を行ったあと、2005年4月に公園として整備され開園した。 1号墳は頂上まで歩いていくことができ、松阪市街を見渡せる見晴らしのよいスポットとなっている。また儀式の場であったと考えられる「造り出し」を実物大で再現し、出土した埴輪のレプリカを並べて古墳が造られた当時の様子を再現している。ちなみにここに並んだ埴輪は「はにわづくりの会」会員や地元中学校生徒など、市民の手づくりによるものだ。
■1乗車200円で3乗車すると2箇所見学して駅に戻ることが可能!
松阪市に展示されている国宝、船形埴輪と出土した宝塚古墳公園についてお届けした。どちらもこの鈴の音バスで巡ることができ、市街地循環線左回りを利用すれば、はにわ館から宝塚古墳と回ることが可能だ。右回りを利用すれば現地を見学してから、はにわ館で出土した船形埴輪を見ることができる。 どちらで回っても鈴の音バスには3乗車で松阪駅に戻ってくることができ、お手軽に国宝を訪ねることが可能だ。鈴の音バスは1乗車200円(中学生以上)で、1日乗車券の設定はない。はにわ館の入館料110円(18歳以下は無料)と合わせても、1000円以下で考古学の秋を楽しむことができる。 鈴の音バスは市内を1周1時間で巡回しているが、パターンダイヤではないので、次のバスを確認してから見学したい。さらに松阪市がここ数年公共交通の利用促進やバスへの興味をもってもらうことを目的としてバス運賃無料デーが行われているが、2024年は11月17日(日)に実施されることとなっている。この日に利用すれば3乗車の運賃600円が無料になる。 ちなみにこれほど多くの埴輪が出土した宝塚古墳は、5世紀はじめに作られたといわれている。この古墳の主が誰なのか、この多くの埴輪がどこで作られたのか、宝塚古墳を作った人々がどこに住んでいたのか等の詳しいことは謎のままであるという。短いながらも過ごしやすい秋の思い出に、古代の謎に思いを馳せてみてはいかがだろうか。