セ・リーグ新人王争いの行方 高木豊は上位チームを支えるリリーフふたりを有力視
【野手に候補はいる?】 ――野手で新人王の候補に挙がりそうな選手はいますか? 高木 野手で新人王を獲る選手は、ある程度レギュラーとして試合に出て活躍し、翌シーズン以降にさらなる飛躍が期待できる選手たちなんです。だけど、今季に関しては、そういう選手はいませんね。 ――それでは、新人王有資格者のなかで少しでも印象に残った選手を挙げるとすれば? 高木 中日の田中幹也(107試合出場、301打数66安打、打率.219、2本塁打、22打点、4盗塁)は、時折インパクトのある活躍を見せました。守備範囲が広いですし、アクロバティックなので目を引きますね。ただ、いかんせん打率が低いのと、体力的な問題もあってか、試合にずっと出られないじゃないですか。使えば何かやってくれそうな期待感がある選手ですが、安定感がありません。 あと、DeNAの度会隆輝(72試合出場、248打数64安打、打率.258、3本塁打、24打点、2盗塁)は、開幕当初のインパクトはすばらしかったですが、やはりルーキーが1年間働くことは簡単ではないとあらためて感じましたね。 ――度会選手にとって、何が壁になったと思いますか? 高木 守備から野球のリズムを崩しましたね。周囲に対しては明るく振る舞っていますが、ものすごく責任を背負う選手なんでしょう。だからひとつのミスを必要以上に気にしてしまい、尾を引いてしまうんじゃないかと。 バッティングに関してはミート力が高いですし、非凡なものを感じさせてくれるのですが、打球の処理や「どこに投げればいいのか」など、守備に関しては外野手として基本的なことができていません。たとえばホームに投げないといけない状況なのに、セカンドに投げてしまったり......。やはり守備がしっかりしなければ、レギュラーにはなれません。
――シーズン途中まではよかった選手で言うと、巨人の西舘勇陽投手(27試合登板、1勝3敗19ホールド1セーブ、防御率4.23)も、当初はセットアッパーでいい活躍を見せていました。 高木 西舘には期待しましたけどね。当初は、打つほうでは度会、投げるほうでは西舘が新人王争いを引っ張っていくのかな、という印象がありました。ただ、やはり西舘は投球フォームの修正が必要かなと。体の開きが早いのでボールの出どころが見やすいですし、タイミングを取りやすい。だから彼は、どんな状況でもクイックモーションで投げているのかなと思ったぐらいです。 150km以上のボールでも簡単に見極められてしまうし、弾き返されてしまう。相手のバッターが見慣れないうちはそれでも抑えることができていたのですが、慣れてくるとそうはいきません。 ――新人王の有力候補は結局、最初に挙げた船迫投手か黒原投手になるでしょうか? 高木 野手に目ぼしい選手がいませんし、そうなりますね。両投手ともに50試合近く投げて防御率1、2点台とよくやっていると思います。巨人と広島がいい位置にいるのは、船迫や黒原のようなピッチャーの存在が大きいと思います。 (パリーグ編:高木豊が挙げる有力投手3人と、今後に期待の野手>>) 【プロフィール】高木豊(たかぎ・ゆたか) 1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。
浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo