能登の状況は明日のあなたの街かもしれない 落合誓子[ノンフィクション ライター/珠洲市在住]
降雪時期までに進めたい
写真に示したような瓦礫の家が能登全体で約3万2410棟と公表された。同時に知事は「公費解体と自費解体が同時に進めば降雪時期までにはかなり進む」との見通しを発表しているが、問題は解体業者の数だと思う。原発問題の時に詳述したように、このサザエの尻のような半島の先で物と人の運搬を一体どうするのか。調達できる機材や業者の数を著しく増やして自費解体に供することが本当にできるのだろうか。 被災で崩落して未だに遊園地のアトラクションように上下する道路を通ってどれだけの重機を移動させられるのか。今やあの道は私たちの生活道路だ。大量の大型トラックに阻まれて、私たちは金沢に買い出しにさえ出かけられなくなる。 それに作業員は何処に寝泊まりするのだろうか。作業員用のプレハブ建設は進んでいるとは言うものの、本当に数が足りるのだろうか。彼らの食事はどうするのか。未だにスーパーにはものが少ない。 ここは半島なのだ。まだまだ難問は多い。限られた重機と限られた人では、とても多くは望めない。 もちろん人と重機さえあればいくらでも早くはなるだろうが、近所の解体現場をみていても、その広さにもよるが、1つの重機で3人がついて、更地にするのに数日はかかっている。簡単にどうにかなるとは到底思えない。奥の手とばかりに、自衛隊の船で人や重機を運ぼうにも海岸は隆起していて接岸さえできない。まずその岸壁の改修からやらなければならない。 私は2~3年で片付けられたら合格だと思う。市民ともども辛抱しつつ、焦らずに片付けていく他はないのだと、私は思っている。
復興には仮設でなくずっと住める家が
そんな中で少し明るい情報もある。仮設住宅の住民を「災害公営住宅」なるものを新設して被災前の居住跡地やそのエリアの空き地に半永久的に暮らせるようにするという案があるという話である。珠洲市の復興計画案に明記されている。 もちろん今はまだ、ただの案なので紆余(うよ)曲折はあるにしても、商店や仕事場の復興と同時に本格的な住居を確保できないと「まちづくり」は到底進まない。 とにかく、珠洲市はあの原発をみんなで止めた自治体なのだ。細かい復興プランに関する会議に若者や移住者がたくさん参加しているのも、とても頼もしい。これから何が始まるのか、辛いことを乗り越えて、みんなで監視しつつ、進んでいきたいと思う。 それよりも何よりも、今は、当面続くはずの台風情報が一番怖い。あの瓦礫が風に吹き飛ばされ「舞い始めたら」一体どうなるのか。壊れ放題の窓に風が入って天井が持ち上げられたら本当にどうなるのか。想像を絶する被害が発生する。地震が誰も止められないように、この台風も誰にも止められない。私たちは自然の中に住まわせてもらっているのだから……。