「まぁ結果論なので」じつは田中碧と町田浩樹が、中村敬斗を生かす「工夫」を…ただそれが日本代表の課題でもあるワケ〈オーストラリア戦深層〉
田中が見せた“ミドル以外の工夫”とは
そんな試合で田中が見せたアクションは、可能性を感じさせた。 たとえば、田中が71分に放ったミドルシュート。「ミドルシュートは引いた相手を崩すための常套手段」であることは間違いない。ただ、彼はもっと解像度の高い分析をしたうえで判断を下していた。 「相手ディフェンスラインの5枚のうち『3の脇(3センターバックと両サイドバック間のこと)』をどうやって取るのかが、すごく重要かなと思うので。裏のスペースを取るのも一つだし、『ミドル』を見せて相手を引き出すことも必要。相手がちゃんと守備をしてくる中で、どうやって、スライドの中に潜っていくのか……」 このミドル以上に評価される工夫が、別にある。 後半になって、田中が〈あえて外寄りのポジション〉を取ったところが一つのカギだった。 前半、日本は〈4-1-5〉のような形でビルドアップをしていた。当初はオーストラリアがハイプレスをかけてくると予想したからだ。また、サウジアラビア戦で出た反省点も関係していた。最終ラインにボランチの1枚が降りておけば相手をおびきよせ、相手陣内の深い位置でのスペースが広がるはずだと選手たちは感じていた。 だが、5日前の中国戦でハイプレスをしかけたオーストラリアは、日本戦では一転して「最終ラインで持たせてもかまわない」という戦い方をしてきた。
3、4枚で回さなくても敵陣に入れていたのに…
ここで、もう1つのデータを紹介する。 試合毎のプレス傾向を示す「PPDA」というものだ。この値が小さければハイプレスをしかけていることになり、逆に大きいと自陣で守る時間帯が長かったことになる。ではオーストラリアは、2試合でどんな数値を残したのか。 中国戦=4.15 日本戦=18.05 参考までに、日本が敵地で勝利したサウジアラビアのPPDAを見てみると……時間帯によって高い位置からプレスをかけてきたこともあり、「9.00」だった。この3つの数値から、オーストラリアの戦いぶりがいかに変わったのかがイメージできるかもしれない。 試合後、反省の弁を口にしたのは堂安律である。誰かを責めるわけではなく、チームメイトに自分から提案すべきことがあったと振り返る。 「わざわざ3枚や4枚で回さなくてもハーフウェイラインを越えられるのに、後ろに人数をかけていたところはありました」 田中も堂安と似たような感覚を抱きながら、前半の45分間は葛藤を抱えていた。ダブルボランチの一角として送り出された自分が、自由に動きすぎるのをためらっていた。攻撃を機能させるために本来のポジションを離れれば、攻撃から守備への素早い切り替えが難しくなるのでは、という懸念があったのだ。
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