プーチン大統領が発表「ロシア経済が日本を抜いた」データの「ヤバいカラクリ」
いちばん都合のいい数字
なお、対象とする商品・サービスの差があるため、国際機関の間でもPPPドルベースGDPは異なる。 国際通貨基金(IMF)が公表している2022年のPPPドルベースの名目GDPは、1位中国30兆1911億ドル、2位アメリカ25兆7441億ドル、3位インド11兆9287億ドル、4位日本6兆1597億ドル、5位ドイツ5兆3656億ドル、6位ロシア4兆8250億ドル、7位インドネシア4兆333億ドル、8位ブラジル3兆8299億ドル、9位イギリス3兆7733億ドル、10位フランス3兆6971億ドル。これは、世界銀行との数字とも異なっている。プーチン大統領は「いちばん都合のいい数字」を使った。 GDPのような数字での国際ランキングはまだわかりやすいが、そうでないものはより注意が必要だ。 最近の一例をあげれば、男女格差(ジェンダー・ギャップ)が話題になった。 世界経済フォーラムが発表した2024年版「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で日本は調査対象の146カ国中118位となり、話題になった。では果たして、この報告は国際比較において、どこまで妥当なのか。 世界経済フォーラムは、ダボス会議を主催するスイスの非営利団体だ。そこが、健康、教育、経済、政治の分野毎に各使⽤データをウェイト付けしてジェンダー・ギャップ指数を算出している。
都合の悪い数字を取り上げるケース
より具体的には、健康で健康寿命、出生性比、教育で識字率、初等就学率、中等就学率、高等就学率経済的、経済で労働力(参加)率、同類職における賃金、平均所得、立法職・政府高官・管理職比率、専門・技術職比率、政治で国会の議席、大臣数、最近50年の首長の在任期間が使われている。 健康と教育では、それぞれの順位は58位、72位でまずまずであるが、政治の順位は113位、経済は120位。健康と教育の数値は世界トップクラスであるが、経済は平均より低く、政治では世界最低ランクだ。いずれにしても指数計算上、政治と経済が大きく足を引っ張っている。 同種の指標として知られているのは、国連が発表しているジェンダー開発指数(GDI)とジェンダー不平等指数(GII)がある。 GDIは、人間開発の3つの基本的な側面である健康、知識、生活水準における女性と男性の格差を測定し、人間開発の成果におけるジェンダー不平等を表している。3月に公表されたもので、日本は193カ国中92位となっている。 また、GIIは、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、労働市場への参加の3つの側面における女性と男性の間の不平等による潜在的な人間開発の損失を映し出す指標である。これも3月に公表されているが、日本の順位193カ国中22位である。 それにしても、男女平等ランキングは数多あり、日本がポジティブな位置に入っている数値もあるのに、なぜか順位の低いもの、都合の悪いものだけをマスコミは取り上げる。 なお、林芳正官房長官は、今回ジェンダー・ギャップ指数で日本が118位であったことに対し、「政治分野では立候補や議員活動と家庭生活との両立の困難や人材育成の機会の不足、経済分野では女性の採用から管理職、役員へのパイプラインの構築が途上であることなどが背景にある」とした。