ジョコ・インドネシア大統領が狙う「一族支配」、布石は着々でも存在する高いハードル
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2月14日に行われたインドネシアの大統領選では、プラボウォ・スビアント国防相とギブラン・ラカブミン・ラカの正副大統領候補が勝利を収めた。3月20日に選管から発表された開票結果では、プラボウォ=ギブラン組が58.6%を得票し、他の2候補を大きく引き離して圧勝した。 プラボウォ国防相は、1998年の民主化以前、スハルト大統領による強権体制の下で国軍将校として台頭し、スハルトの次女とも結婚したことから、一時はスハルトの後継者と見なされた人物である。陸軍エリート部隊を率いていた際に分離独立運動や民主化運動の活動家を弾圧したという人権侵害の疑惑もあるため、大統領就任後にどのように政権を運営するのか注目されている(この点については2024年3月5日付『日本経済新聞』の「 経済教室 」の記事を参照していただきたい)。 しかし、ここでは副大統領になるギブランに注目する。今回の大統領選でプラボウォが圧勝した要因は、政権末期になっても人気の高い現職の大統領ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)の支持者の票を獲得することと、有権者の過半数を占める40歳以下の若い世代の支持を得ることの両方に成功したところにある。この2つの選挙戦略においては、「ジョコウィ大統領の長男」というラベルを持ち、「30代の若い政治家」としてアピール力のあるギブランを副大統領候補に選んだことが非常に効果的であった(この点については、拙稿「 なぜプラボウォは圧勝できたのか?――2024年大統領選挙を開票速報から分析する 」『IDEスクエア』2024年3月の記事を参照していただきたい)。
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川村晃一