世界自然遺産「奄美大島」公共工事に環境保護団体が警鐘 ユネスコに調査を要望
ユネスコ(UNESCO、国際連合教育科学文化機関)世界自然遺産でもある奄美大島(鹿児島県)の自然環境が現在直面している問題をめぐり、同島で環境保護活動を行なう団体が8月28日に東京都内で緊急記者会見を開いた。 主催者は同島の一般社団法人「奄美の森と川と海岸を守る会」(髙木ジョンマーク代表)。環境NGO「虔十の会」(坂田昌子代表、東京都八王子市)が共催した。「守る会」の髙木さんは、同島の世界自然遺産に隣接する緩衝地帯が深刻な脅威にさらされている旨の書簡をユネスコに送ったことを報告。とりわけ、同島の嘉徳川が危機的状況にあることを訴えた。 奄美大島は2021年7月に島内の一部が、同じく琉球弧を形成する島々である徳之島(鹿児島県)、沖縄島北部と西表島(どちらも沖縄県)一部と共に世界自然遺産に登録された。これらの登録地を含めた4地域の面積は日本の国土のわずか0・5%に過ぎないが、計約4万2700ヘクタールの陸域に維管束植物1819種、陸生哺乳類21種、鳥類394種、陸生爬虫類36種、両生類21種が生息、生育。登録地にはIUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種レッドリストに載る種が95もある。 同島南部を流れる嘉徳川全域と河口付近の海岸・嘉徳浜、近隣の嘉徳集落(大島郡瀬戸内町)は、世界自然遺産登録区域(登録地のこと)に隣接し、その環境を保つ緩衝地帯にある。 嘉徳川は川本来の姿を今も留める貴重な河川で、源流は河口から約1・5キロ遡った渓谷(世界自然遺産登録区域)にあり、1年の約半分は嘉徳集落前の砂丘の近くを通って海に注ぐが、流れは蛇行し、河口も自由に変化する。嘉徳浜では国内唯一、世界最大のウミガメであるオサガメの産卵や、1属1種で近縁種の存在しないアマミノクロウサギ(国の特別天然記念物にも指定)の姿も確認されている。流域にも、今は同島だけに存在するリュウキュウアユや、ここだけで確認されているスジエビ(Cタイプ)が見られる。