命を守るローリングストック――南海トラフ地震、首都直下地震に「自助」で備える
4日間で7200万食の輸送を削減可能
水を節約するには、なるべく食器を汚さない(洗い物を増やさない)ために皿にかぶせるラップ類や、紙皿・紙コップ・割りばしなどもあると便利だ。ローリングストックは停電時でも食を確保し、命をつなぐために極めて有用だ。東京都や農林水産省のHPも充実しているので、ぜひ参考にしていただきたい。 もう一つ忘れてはいけないのが、携帯トイレである。下水管は巨大なシステムであり、どこか一カ所が壊れれば広いエリアで使用不可となる。マンションの場合、上階の人が風呂水などで無理やり流すと、1階の住居で下水が溢れて悲惨なことになりかねない。大地震が起きたら、下水道の使用の可否が明らかになるまで、携帯トイレを使用する。そのために各戸で携帯トイレを十分に備蓄することが必要だ。 最後に、ローリングストックは公助の負担を軽減する、ということにも触れておきたい。 南海トラフ地震が起きた場合、国から2府22県に送り込む食料は4日目から7日目までの4日間で1億840万7700食にもなる。この数字は中央防災会議幹事会が策定した「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」によるものだが、輸送力を考えると極めて実現困難な数字と筆者は考えている。しかし、仮に日本の人口の5%にあたる600万人がローリングストックで1週間分の食料を確保できていれば、4日分で7200万食分を送り込む必要がなくなり、食料も輸送力も計画の30%で足りる。一人一人が独立不羈の心を持ち、自分の命は自分で守る準備をすることで、国や自治体の負担を軽減し、巨大地震からの復興に一日も早く着手できるのではないだろうか。 ◎中澤剛(なかざわ・たけし) 株式会社セブン-イレブン・ジャパン リスクマネジメント室エキスパート。元陸上自衛官。1963年1月31日生まれ。1985年に防衛大学校を卒業し、陸上自衛隊に入隊。2018年、西部方面混成団長を最後に定年退官し、セブン-イレブン・ジャパンに入社。同社のBCP(事業継続計画)を、2012年の策定以来、初めて大幅に改訂した。日本フランチャイズチェーン協会が国や自治体と共同で開催する「大規模災害対応共同研究会」の座長を務める。
株式会社セブン-イレブン・ジャパン リスクマネジメント室エキスパート 中澤剛