SAPのクラインCEO、生成AIの「プライムタイムの準備整う」--WalkMe買収にも言及
WalkMe買収により人の変革を支援 AI Foundation上のアプリケーションレイヤーでは、Cloud ERP、サプライチェーン、支出管理、CRM(顧客関係管理)、そしてBTPなどSAPアプリケーションへのAIの組み込みと、「Generative AI Hub」を使ったAIのカスタマイズの2つの活用があるとする。 SAPアプリへの組み込みとしては、現在約50種を用意する生成AIシナリオを倍増し、年内に100以上用意するという。 Klein氏は、「ビジネスプロセスやワークフローにAIを直接組み込むことができるのはSAPだけ」と述べ、「SAPのAIユースケースは、顧客のために事前にトレーニングされ、アプリケーションのワークフローに組み込まれているので、そのまま利用できることができる」とした。加えて、「SAP上に追加のワークフロー自動化レイヤーを構築したり、土台のデータやセキュリティモデルを理解したりすることなく個々のAIユースケースを統合しようとする動きがあるが、このアプローチはお勧めしない」と指摘した。 もう一方のAIのカスタマイズは、企業独自の要件を満たすAI用であり、SAPはBTP上にGenerative AI Hubを用意する。「GPT」「Gemini」などのモデルをサポートしており、SAPデータや認証レイヤーと深く統合した形で利用できる。「単一契約でこれら全てのモデルをコンシュームできる」とKlein氏。既に80社以上のパートナー企業がカスタマイズAIのユースケースを開発しているといい、例えば、EYでは1日300件以上発生するという税務係争管理のユースケースを開発し、自動化を進めているという。 Sapphireでは、AI Hubで新たに「Mistral AI」を加えることが発表された。 SAPは、2018年から「ビジネスAI」として、信頼性を含めたAIの取り組みを進めており、Klein氏によると、2万7000社以上がSAPのビジネスAIを利用しているという。 Sapphireでは、このほかにクラウド移行支援のマネージドサービス「RISE with SAP」、中規模企業向け「GROW with SAP」の強化も発表した。 RISE with SAPでは、「SAP Enterprise Architect」を導入し、Klein氏は、これにより「ライフサイクル全体でRISE手法を踏襲するガイドを得られる」と述べる。さらに、エンタープライズアーキテクチャー管理の「LeanIX」、プロセス管理の「SAP Signavio」などのツールを利用して、ライフサイクル全体でプロセス、システム、データを総合的に管理できる。 だがKlein氏は、「一つだけ欠けていたものがある」と切り出し、米国で発表したWalkMeの買収に触れた。WalkMeは、デジタルアダプション(デジタル定着化支援)プラットフォームで、Klein氏は同社の技術でエンドユーザーをサポートできると述べた。この買収でSAPはWalkMeに15億ドルを支払う。 「WalkMeはエンドユーザーに最新機能を知らせることができる。SAPは全てのソリューションにWalkMeを統合し、RISEメソドロジーの一部にする。人、プロセス、データ、システムのトランスフォーメーションを進めることができる」(Klein氏) GROW with SAPでは、「SAP Sales Cloud」と「SAP Concur Expense」が加わった。追加料金なしに利用できるという。 最後にKlein氏は、「SAPは包括的なポートフォリオを通じて、企業に俊敏性とスケールを提供する」と述べた。ビジネスプロセス、エンドユーザーの生産性を向上し、ビジネスネットワークを通じて業界全体のワークフローをつなげてバリューチェーンをさらに豊かにし、ESG(環境、社会、統制)の透明化により、持続可能かつ収益性のあるビジネスを実現するとした後には、「SAPは今後も顧客のニーズに耳を傾け、イノベーションを継続して届ける。これは私のコミットとしてお約束する」と述べた。 Klein氏の言葉は、2022年にPlattner氏が同社の50周年を記念したインタビューで語ったという顧客主義と共鳴するものだ。このインタビューでPlattener氏は、SAPの従業員へのアドバイスとして、「SAP創業時のアプローチに戻ること。(SAP初期に)われわれは顧客の元に行き、SAPをどのように使っているのかを見て、声を聞いていた」と述べている。 (取材協力:SAPジャパン)