【羽生結弦】五輪2連覇王者の知見「僕をベースに研究」蓄積はショーや後輩たちの指針に/対談4
冬季五輪男子2連覇のプロフィギュアスケーター羽生結弦(29)が、コンディショニング面において「集大成」のサポートを受けたと感謝する22年北京五輪を回想した。このほど、日本代表選手団を支援する味の素(株)「ビクトリープロジェクト(VP)」の栗原秀文チームリーダー(48)と対談。前人未到だったクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑み、世界初の「4A」認定をつかむまでの舞台裏を振り返った。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のプレシーズンも開幕。金メダル2個の羽生に寄り添うことで得られた知見が、日本勢の次代も明るく照らす。(敬称略)【構成=木下淳】 ◇ ◇ ◇ 北京五輪では、チームジャパン全体も支えた栗原が選手村へ入りながら、村外拠点の調理シェフと連携し、羽生に「勝ち飯」を提供した。除脂肪量の維持から増加に尽力。男子の演技が午前中だった18年の平昌大会と同様、朝4時台の起床を迫られた羽生と日程も入念に打ち合わせた。 羽生 五輪はスケジューリングが普通の試合と違うので、例えば「食事は何時間前」というルーティンが選手にはあるんですけど、かなわない時が多いんです。「ここで補食を入れよう」とか、いろいろ話し合いましたね。 栗原 具体的に、サイエンスに近い領域の話までコンプリートしましたね。あとは健康な状態で氷の上に送り出す。僕の仕事はそこまででした。 羽生 フィギュアは、試合では基本的に(サポートは専属で)僕だけだったので、結果を待つ時間の緊張感とか、また違ったものだったろうなと思います。「やることやった」「あとは待つしかねえ」って(笑い)。たぶん「面倒くさい」と思われていたと思うんですけど、かなり勉強させてもらいました。お茶わん1杯のご飯が何キロカロリーか、すら知らなかった自分に、体づくりを考える土台をつくってくださったので。 一方、支援から生まれる知見は、味の素サイドに存分に蓄積された。 羽生 毎週、提出していたロードや、体組成計のデータと自分の活動の掛け合わせ、調子がどうか。研究にもなったんだろうなと思います。数式と、実際にアスリートが体感する強度が合っているのか。19歳とはいえ、既に五輪を取っている金メダリストだったので。体組成計、活動量、カロリー消費を(10年超にわたって)僕をベースに研究したんだろうなと。 プロ転向後、たった1人で90分間を超えて舞う、前例のないアイスショーにも生きている。4日に発表した全国ツアーは30歳の誕生日を迎える12月7日に開幕。再び進化を証明する。競技会のシーンでも、羽生×栗原の試行錯誤は成功例として受け継がれていく。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪。後輩たちの道先を照らす、確かな指針となる。