土木が原風景となる時(4)ハイブリッド構造を採用した「羽田空港D滑走路」
土木施設は面的な拡がりをもつ広域施設となることが少なくない。このような場合、遥か上空から一望し、その姿形とレイアウトを視覚的に理解することが重要である。例えば、空港施設の場合、滑走路、誘導路、エプロン(駐機場)、旅客ターミナルビル、貨物ビル、管制塔、格納庫など、各種関連施設が複数配置されるが、それらの規模、位置、繋がりを俯瞰することにより、巨大空港の機能を理解できる。また、空港周辺の陸海空からの制約を受け、かつ、風向きなど気象条件によって運用が左右されることも、空港ならではの特徴ではないか。
さて、ここでは、高分解能衛星(IKONOS/GeoEye-1衛星)によって撮影された羽田空港(東京国際空港)の画像を披露したい。最初の画像(写真1)は、5000メートル×5000メートルのライブラリー画像(撮影2009年(平成21年)4月7日、GeoEye-1衛星)である。運用中のA、B、C滑走路および建設中の新滑走路(D滑走路)とその連絡誘導路を、まずはご確認いただきたい。
この新滑走路は、良く知られているように埋立部と桟橋部のハイブリッド構造となっている。我が国の沖合海上空港は、通例埋立て方式となるが、D滑走路の場合、多摩川の河口付近にかかる箇所については、川の流れを妨げないようにするため桟橋方式が採用された。次の写真2は、さらにD滑走路の桟橋部を拡大したものであるが、整然と敷き詰められたジャケット構造が、“マス目の美学”とも呼べる美しい幾何学模様を呈している。
写真が撮られた当時は折しも工事最盛期であるため、(連絡橋も含めて)そのハイブリッド構造の特徴をはっきりと識別することができる。衛星高度681キロメートルの太陽同期準極軌道にて捉えられた高分解能衛星画像は、工事中の重機や作業船が動き出すのではないかという臨場感を醸し出し、粛々と進む海上工事の全容を伝えている。
我が国の最先端海洋土木技術が駆使されたD滑走路は、2010年(平成22年)10月に供用を開始し、その後の発着回数の増大に大きく寄与している(写真3、撮影2010年(平成22年)12月17日、IKONOS衛星)。4本の滑走路が稼働する羽田空港は、シャルル・ド・ゴール空港(パリ)、ヒースロー空港(ロンドン)など世界有数の国際空港と肩を並べることになる。