土木が原風景となる時(4)ハイブリッド構造を採用した「羽田空港D滑走路」
本稿を書き終える頃、家族旅行で羽田空港を利用する機会があり、帰路はA滑走路へ着陸した。その折、右側の窓側席に座っていたが、今まさに着陸しようとする時、ふと窓の外を見るとD滑走路のほぼ全容が見えた(写真4)。その端部には桟橋部のジャケットの柱材(レグ部)がわずかに見え、なるほど、滑走路が海面から上がっていることが目視できた。建設中は3回ほど建設現場を見学させていただいたが、供用後初めて見る晴れ姿に、“これがハイブリッド構造だ!”、と勝手に感激していた。
さて、来る2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、羽田空港は空の玄関として多くの来訪者を迎える新たなミッションが課せられる。戦後、1952年(昭和27年)に返還された東京国際空港は、規模拡充(後に、沖合展開事業、再拡張事業と呼ばれる)を繰り返し、半世紀を経て新たなレガシーを育み、やがては東京湾臨海部の原風景となるであろう。 (画像・資料提供:日本スペースイメージング)
■施設のデータ:羽田空港 D滑走路 ・D滑走路:羽田空港の第4の新設滑走路 ・所在地:東京都大田区羽田空港(町名が「羽田空港」になっている) ・構 造:長さ2500メートル、幅60メートル ・ハイブリッド構造:埋立部(2/3)、桟橋部(1/3)、連絡誘導部で構成される ・供用開始:2010年(平成22年)年10月21日 著者プロフィール 吉川弘道(よしかわひろみち)1975年早稲田大学理工学部卒。工学博士(東京大学)、技術士(建設部門)。米コロラド大学客員教授、東京都市大学教授を経て、現在、東京都市大学名誉教授。専門は、耐震設計、地震リスク。土木学会論文賞など多くの受賞歴がある。現在、インフラツーリズム推進会議議長を務めるほか、投稿サイト「土木ウォッチング」やFacebookページ「Discover Doboku」を主宰。著書は「鉄筋コンクリート構造物の耐震設計と地震リスク解析」(丸善)など7冊を上梓。